■ 建築家資格制度の経緯 閉じる
2003年6月16日
(社)日本建築家協会・会長
建築家資格制度推進委員会・委員長 大宇根 弘司 様
(社)日本建築家協会・近畿支部
支部長 出江 寛
近畿支部建築家認定実務委員会
委員長 岩本 貞幸


本部建築家資格制度推進委員会制定の「建築家資格制度試行」に関する意見書

 平素は、建築家資格制度の全国展開に向けてのご尽力、また当近畿支部の運営に対し、ご配慮
いただき誠にありがとうございます。近畿支部は1999年、独自に「建築家資格認定制度」を制定し今日に至って参りましたが、今回、大宇根会長を中心とされ、全国展開への試行が始まりましたことは、当支部にとりましても感、極まる思いであります。今後も本部と共に歩んで参りたい所存でありますが、先日、当支部の建築家資格制度に関する委員会におきまして、本部「建築家資格制度試行に向けて」の冊子の文書内容に関する審議があり、いくつかの疑問箇所について、近畿支部として、会長へ意見書として提出することになりました。
JIAの中で、先行して独自に建築家資格認定制度を実施して参りました近畿支部であるからこそ、発生する疑問点もあろうかと思います。ご多忙とは存じますが、以下の各意見に関しまして、文書でご回答賜りたく、宜しくお願い申し上げる次第です。

※ 以下近畿支部としての意見を箇条書きにさせていただきます。

■意見─1 大宇根会長文書(いよいよ始めます─建築家資格制度の試行)より
■意見─2 中田前専務理事文書(建築家資格制度の理解を深めるために─建築界の動き)より
■意見─3 小倉副会長文書(建築家資格制度確立に向けて─段階的目標設定)より
■意見─4 大澤秀雄氏文書(建築家資格制度規則のポイントと規則(案))より
■意見─5 米澤正己氏文書(認定基準とUIA基準との同等性)より
■意見─6 加藤俊二氏文書(実務訓練のあり方 モニタリングの成果と今後の実践)より
■意見─7 小倉副会長文書(第2段階 社会的制度としての定着─JIAの組織的再整備)より
■ 意見─8 橋本新副会長文書(第三者機関による認定の実現)より
■ 意見─9 (Q&A─建築家資格を取得する人たちへ)より
■ 意見─10 添付資料—1の、本部「建築家資格制度試行」と米国NCARBの組織と業務の比較検証からの見解について。

以上、今後も当支部が、今回の「本部試行」に一丸となって協力していくためにも、ご回答いただきたい事項であります。
宜しくお願い申し上げます。

[資料─1]
■本部「建築家資格制度試行」と米国NCARBの組織と業務の比較検証からの見解
2003年6月11日
近畿支部 岩本作成

上記の比較検証(添付資料)を行った結果、本部建築家資格制度を試行するに当って以下の内容を提言したい。建築家制度設立について、歴史ある米国の例を参考にすることは、意味あることと考えた。また、JIAがその第3段階で考えているU.I.Aのアクレディテーションのためにも、NCARBの現状を把握することは必要である。
組織についての比較
NCARBでは、本部委員の構成は、会長以下全員がAIAメンバーとなっている。またその傘下の実行幹部は、半数がAIAで半数は市民代表となっている。一方各州委員会では、呼称は州により異なるが、代表に市民(公共機関役人)を配し、他の委員はAIA建築家と市民が配されている。その比率は州により異なり、California州などは、建築家4名に対し、10名の市民が配されている。法曹関係(弁護士)は委員ではなく、カウンセラーとしている。

これに対し、我がJCARB(試行段階)の本部委員の構成は、評議会の議長はJIAとしており、他建築関係評議員(士会・学会)2名、市民4名である。実務委員会(NCARBの実行幹部と位置付けられる)は全員JIA建築家となっている。一方各支部評議会の委員構成は議長がJIA、他2名は建築関係、市民2名となり、弁護士1名は市民に含まれる。実務委員会は、全員JIA建築家となっている。
上記のようなことから……。

[見解─1]
  NCARBでは既に80年の歴史があり、法制化も制度も一般市民からの信頼も、既に確立されており、上述のような委員構成になっているものと思われる。とくにNCARB本部において全委員がAIAメンバーというのは、今回のJIAの委員構成と大きく違うところであるが、我国はこれから制度を立上げる段階であり、第三者性を担保し、市民の理解を得る意味でも現段階としては妥当な組織構成と思われる。
また両者の実組織構成をみても、NCARBは管理部門などが主体の構成となっているのに対し、JCARBは、とくに本部・支部実務委員会において、いわば実務型構成となっており、現段階としては(市民の確固たる理解を得るまでは)妥当な構成と思われる。
業務についての比較
両者の業務を比較すると、JCARB(試行)の業務内容は、NCARBの業務内容に全て含合されている。NCARBは本部と各州委員会との分担業務(責任範囲)がJCARB(試行)より、明解に区別されている。
[見解─2]
  JCARBの試行段階での本部・支部間の業務分担は一部、不明解なところはあるものの、立上げ時点においては、各支部の資格制度に対する理解度の差もあることから、今後より一層明解にしていくものと、理解すべきである。

両者の業務の内容について、NCARBに有り、JCARB(試行)の業務計画に無いものをあげると次の通りである。
1) 適正な建築教育水準の維持の観点から、関連機関と関わりをもつ、独立した担当部署
が無い。(大学や建築学会などとの協議など、業務が多くなると考えられ、専門の部署を新設すべきである。)
2) 海外との交流、建築家の国際化の観点より、海外の最新の建築家制度の情報収集、調
査研究などの独立した担当部署が無い。(第3段階での、UIAのアクレディテーションのためにも試行段階から部署を新設すべき)
3) 建設業の総合的教育水準の向上のための担当部署が無い。
(いくらよい建築家が生まれても、施工業者の質が悪くては、良い建築は出来ず、消費者保護の社会的使命は果たせない。BCSなどとの協議が必要か……。)
4) これはNCARBの業務としてはとくに担当セクションは無いが、JCARBとしては、
これから制度を立上げる分で、一般市民(消費者)に対して、登録建築家の存在を広報(PR)する担当部署を新設すべきである。(NCARBとしては歴史があり、とくに消費者PRなど必要ないと思われる)
閉じる
公益社団法人 日本建築家協会  The Japan Institute of Architects (JIA)
Copyright (C)The Japan Institute of Architects. All rights reserved.