■ 建築家資格制度の経緯 閉じる


本部建築家資格制度推進委員会制定の「建築家資格制度試行」に関する意見書

■意見─5 米澤正己氏文書(認定基準とUIA基準との同等性)より →「該当文章」
  実務訓練コースのUIA基準との同等性確保要件で、一級建築士資格取得と4年以上の実務経験で、UIA同等と考えられています。
近畿支部では3年以上の実務訓練(訓練中一級取得)で、UIA同等と考えており本部の4年の出処をご説明下さい。
回答-5(米澤正巳)
  実務訓練に関する年数設定は私の提案というより委員会において調整された数字です。調整の基準となった年数は、建築士会の設定した実務実績5年という数字とUIA基準(アメリカの建築家資格制度における標準的な年数でもある)において目標とされた3年という数字です。試行の第一段階において実績認定で資格が取得できる年齢が建築士会の専攻建築士制度と同じになるように5年と設定したわけですが、実務訓練の最短期間を1年間の実務経験年数も含めて4年としたのは、実務訓練コースを選択した場合は実務訓練を受けずに実績のみで認定を受けるより1年早く資格を取得できるというインセンティブを付与するために実績認定コースより1年短縮してあります。そもそもJIAの進めている建築家資格制度における認定基準はUIA基準と同等以上という方針ですから、UIA基準より1年多くても可としてあります。
そもそも、UIA基準にもアメリカの建築家資格登録制度にも建築の実務経験で資格を授与するという考え方はないのですが、日本独自の事情と基準設定により実績による建築家資格の授与は必要で、試行の第二段階以降も将来にわたって実績による資格の認定コースはあるべきであるというのが圧倒的意見でした。しかしながら私としては、将来的に新たに学校教育を修了して建築家を目指す人々やJIA会員以外の申請者にこの実績認定基準を適用しようとする場合は再考するべきであると考えます。
その理由としては、
1)建築家としての実績は、建築家資格を取得しなければ得られない。
AIAの考え方では、実務経験による実績とは建築家資格を取得した後の建築家としての職能活動を指すものであって、建築家資格を取得する以前の建築職能に係る活動は「実務訓練」と位置付けられていると思われます。すなわち、資格を取得しなければ建築家としての実績はありえないので、当然実績による資格の授与はありえないことになります。
2)実績の認定は客観的評価が難しい。
アメリカの建築家資格登録制度においては、特にNCARBの登録建築家試験制度に見られるように、試験問題の作成から試験の実施、その採点方法に至るまで、きわめて高いレベルでの採点基準や評価方法における客観性が求められており、実績による認定のように基準の客観性の確保が難しい認定方法を導入するという考え方はないようです(一部の州で従来から面接を導入しているが過半の州では行われていない)。そのかわりにIDP(実務訓練プログラム)がかなりの検討期間と議論を経て、資格取得条件の一部として導入されました。客観性の確保としては、第三者性の確保(第三者の導入ではなく、実施し評価する機関が第三者機関であるということ)、試験問題の統計的検証(受験者はそれぞれ異なる問題のセットを与えられるが採点基準は公平に保たれるようにしている)、製図試験のように主観的判断が入り込む可能性のある場合は受験地以外の2つの州の審査員を含む3人の審査員により個別に審査される)などが上げられます。
3)実績のみによる建築家資格の取得を可能とすれば、だれも面倒な「実務訓練」を受けなくなる。

建築家資格の認定においては、学校における教育で修得できない特定の事項に関して実務に従事しながら実習することにより修得することを求めているのであり、特定の事項に関して実習することなくただ単に実務に従事した年数のみで認定する考え方はアメリカの建築家資格登録制度にはないようです。日本においても実績認定コースが存在する限り、UIA基準に適った資格制度の普及は難しくなるのではないでしょうか。
対応としては以下のような方策が考えられますが、将来的対応に委ねます。
1) 実績による認定はその適用期間を限定する。
そもそも、実績により認定しようとする対象者は、すでに一級建築士資格を取得してかつ建築設計の実務に相当期間従事してきた者であるので、希望する者は限られた期間内に新たな建築家資格の取得申請をしてもらえば良いと考えます。十分な期間を過ぎても申請がない場合は、新たな建築家資格取得の意思がないと判断して良いと考えます。将来にわたっていつでも申請ができるということであれば、試行開始後すぐに申請を行おうというインセンティブが薄れるので、資格申請を促すためにも適用期間を限定した方が効果があると思われます。
2)新規(□□年以降)に教育課程を修了して資格を希望する者には実績認定は適用しない。
試行の第一段階以降に専門教育を修了した新らしい建築家資格取得希望者に対しては、将来における日本の建築家資格制度のUIA基準との同等性を確保するため、必ず実務訓練過程を修了することを課すべきであると思います。
3) 一級建築士資格保持者であっても建築家としての認定を制限する場合は、実績認定以外の要件を課す。



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