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第1段階 試行——暫定的な建築家資格制度を創る

(4)認定基準とUIA基準との同等性 
米澤正己

 「建築実務におけるプロフェショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」(UIA基準)によると、建築家資格制度の機能と目的は、公益の保護の観点から、個人の建築家としての専門的知識と能力を証明し、能力保証に係わる情報の開示を行なうことです。さらに建築家の業務が、その能力が保証されない無資格の者により遂行されることにより、都市環境の質やその持続可能性、開発行為に伴う危険性や既存環境への悪影響が発生することを防止するために、業務遂行の資格者限定(業務独占)を通じた業務品質保証を行なうことにあります。この内、業務品質保証に関しては、無資格の者が特定の社会的機能を遂行することを制限するため、資格の認可は法令に基づくものであることが要求されています。
今回の試行の第1段階においては、この業務品質保証における業務独占に関する法的根拠を既存の建築士法に委ねているため、その対象とする範囲は、前記の「建築家個人としての専門的知識と能力の証明」および「業務形態の開示による業務品質保証」にあると言えます。従って、試行の第1段階における建築家資格の登録認定基準は、日本国内基準である建築士制度に付加する形でUIAの提唱している国際基準との整合性を図り、それに近付けることを目的とします。
しかしながらUIA基準は、建築家資格登録の要件としては「教育→実務訓練→登録試験→登録→継続職能研修」という標準的コースにおける基準についてのみ言及しているので、代替コース、実績認定コース及び実務訓練コースの導入においては個々の用件に関して個別に且つ自主的に同等性を検証することとします。
それぞれのコースにおける免除事項およびUIA基準との同等性確保要件は以下の通りです。

1) 実績認定コースにおける免除事項
  a. 最低5年間に亘る専門教育機関における認定された専門教育プログラムの修了。
  b. 専門教育プログラム終了後の最低3年間に亘る規定のプログラムに沿った実務訓練の修了。
  c. 建築家登録試験における学科試験および設計製図試験。
   
2) 実績認定コースの認定基準におけるUIA基準との同等性確保要件
  a. 専門教育に関しては、1級建築士取得要件として基本的な年数と内容を満たしていると見なし、その証明を要求しない(注1)。
  b. 実務訓練に関しては、1級建築士取得要件に加えて最低5年間の設計監理に関する実務経験を証明することにより替えることが出来るとする(注1、3)。
  c. 建築家登録試験に関しては、1級建築士資格取得に加えて最低5年間の設計監理に関する実務経験を証明することにより、学科および設計製図試験(サイトプランニングを含む)に関しては免除できるものとする(注2、3)。
  d. 申請時点において、JIA会員として必要なCPD単位を取得した証明を必要とするものとする。
   
3) 実務訓練コースにおける免除事項
  a. 最低5年間に亘る専門教育機関における認定された専門教育プログラムの修了。
   
4) 実務訓練コースの認定基準におけるUIA基準との同等性確保要件
  a. 専門教育に関しては、1級建築士取得要件として基本的な年数と内容を満たしていると見なし、その証明を要求しない(注1)。
  b. 現在JIAにおいて試行中の実務訓練を受けている、あるいは受けた者に関しては、その実務訓練プログラムの修了証明をもってこれに替えることが出来るとする。
  c. 建築家登録試験に関しては、1級建築士資格取得に加えて最低4年間の設計監理に関する実務経験を証明することにより、学科および設計製図試験(サイトプランニングを含む)に関しては免除できるものとする(注2、3)。
  d. 申請時点において、JIA会員として必要なCPD単位を取得した証明を必要とするものとする。
   
注1) 日本の専門教育においては習得したことを証明することが難しいとして指定した分野(専門的実務に係る知識と能力に不可欠な構成要素−経営、ビジネス管理、関連法規、倫理、プロフェッショナリズムなどの分野)に関しては、別途証明書(指定した内容の教育を提供している教育機関において習得したことの証明、あるいは実務訓練の課程で習得したことの証明)の提出、あるいはJIAなどの職能団体における指定の講習会などを受講して補うことができるとする。
注2) 但し、建築家資格登録機関(JIA)は資格登録申請者に対して登録試験の一部として面接試験を行うことが出来るとする。
注3) 実務経験の証明に当たっては、建築家資格登録機関(JIA)が指定した書式(ポートフォリオ)に従って作成の上申請書に添えて提出するものとする。

資格者の「専門的知識と能力の証明」に関しては、資格の発行をもって行うこととしますが、建築家の行う業務に関する「業務品質保証」に関しては、登録建築家がその業務を行うに当たって「立場に関する情報開示」を行なっていることを資格登録更新要件のひとつとすることとし、その他の保証要件に関しては建築士制度に委ねることとします。

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