JIA 公益社団法人日本建築家協会

JIAの建築賞

JIA 25年賞・JIA 25年建築選

総評

2025年度 総評

数年前に審査総評として書いた文章であるが、長寿建築の存在意議、評価背景、これからの建築のあるべき姿について述べたもので、論点は普遍なので再度引用させていただく。

人々が育った環境、遊んだ環境、学んだ環境、暮らした環境、働いた環境、家族や友人と楽しい時間を過ごした環境、祈りや瞑想の環境、そのような環境を形成しているのが建築である。人々の人格形成に少なからず関わり、人を育て、人と人を繋ぎ、社会を構成する背景に常にあるのが建築である。建築は人々の記憶をつなぎ、次世代に引き継ぐことのできる社会的な資産であり、文化的な資産でもある。建築家は設計行為を通して地域の誇るべき社会資産、文化資産を創造してきた。しかし大変残念なことに、日本の近代建築は社会的文化的な価値が評価されにくく、老朽化、維持管理の困難さ、耐震性、機能性、容積率等を理由に解体され建替えられることが非常に多い。一方欧米では、建築は文化財として市民に愛され、親しまれ、大事にされており、老朽化とは逆に年月を経るごとに価値が高まるケースが多い。時代の変化に適合し修繕改修しながら大切に利用されている建築も数多くある。年月を経過した建築が人々を惹きつけ、街や地域の魅力を高める効果は少なからず認識されている。脱炭素が喫緊の課題となった昨今、大量の炭素を排出して建設される建物をより長く、より大切に、より上手に使うことは時代の要請に即した流れでもある。長寿世界一の日本に相応しく、長寿建築で地域や社会の魅力を積み重ねる方向に向かうべきではないだろうか。

JIAでは「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」を登録し、顕彰してきた。第1回は1997年度であり、今年度は25回目に当たる。ここ数年は15から30の作品の応募と登録があり、その中から数点を25年賞として表彰してきた。25年以上の月日を経過しても尚、地域に貢献し、地域の人々にとって意義深い建物であることを改めて認定し表彰することで、建築が地域社会に中で果たしている役割や文化的な存在価値を一般市民の方々に認識していただく機会になれば幸いである。

今年は7つの作品を25年賞として選出した。
・大館樹海ドーム
・鎌倉市立御成小学校
・泰山館(KOSUGI PROJECT)
・珈琲ロン
・ねむの木子ども美術館「緑の中」
・霧島アートの森アートホール
・新居浜市立別子銅山記念図書館

審査委員長 佐藤尚巳