JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.344大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)
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竣工時 株式会社IPP
現況
株式会社伊東豊雄建築設計事務所・株式会社竹中工務店
秋田県
株式会社竹中工務店
1997年6月
秋田県大館市
なんて気持ちの良い建築だろう。健康な精神の元に精魂込めて作られた樹海ドームは、ふわりと大館の山並みと共に美しい風景を醸し出している。用途は野球場・多目的競技場。178m×157m、最高高さ52mの世界最大級の秋田杉集成材による木造ドームである。27年と言う月日を経ても白い膜屋根はほとんど汚れていない。
卵型の形態は一定方向からの季節風や雪の影響を配慮すると同時に、ランドスケープとして池の水辺から丘に向かって緩やかにのぼっていく。アリーナ外周の透明感あるカーテンウオールにより下部全てをふわりと浮かせている。水辺から森へと連続する散歩道も住民の憩いの場となっている。わずか約2度の勾配とはいえドーム足元のライズへの対応は施工の苦労が並大抵でないことが推察できるが、それでも建築家の思想による自然との一体化は何にも代えがたい建築が生き生きと存在する価値を創り出している。
内部は自然光の明るさを確保しつつ厳しい冬にも自然な室内環境をつくり出す工夫が随所にみられる。屋根のテフロン2重膜は空調ダクトに利用され温風送風で雪が自然に落ちていく。内幕は音響対策として吸音されている。大空間の空調は段床から温風が吹出し、夏季は自然換気用ルーバー組み込みサッシで熱対策もされている。当初は井水の屋根散水もあったが今は枯渇して使われていない。屋根上に換気塔があるが殆どの写真には写っていない。頂部から少しだけずらして綺麗な卵型のイメージが保たれている。
稼働率はほぼ100%である。野球場にはプロから高校生等々初代からのホームランド記録も掲げられ地元に愛されていることが伝わってくる。ソフトテニスやフットサルなど多様な競技だけでなく、きりたんぽフェスティバルや使用料が安価なこともあるので都心で行うコンサートの練習会場にもなっている。
施設管理は秋田県と大館市の両方で公共施設等総合管理計画を策定し情報共有も徹底している。
JIA25年建築賞の審査は9つのクライテリアがあるが樹海ドームはそのすべてに合致している。建築にこめられた思想が尊重され、人々の記憶に寄与し、その価値が社会に広められている。同時に時代を象徴するような技術を保持して建築が美しく保たれている。
5年に一度はクラス会のように施工者、設計者、街の関係者が1泊2日で集まるそうだ。皆がこの建物を愛していることが伝わり、建築が結びつける人の和を改めて感じることができた。
村上晶子