JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.345鎌倉市立御成小学校
※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。
竣工時 撮影:有限会社アラ井建築写真事務所
現況 撮影:株式会社エスエス 走出直道
株式会社久米設計
鎌倉市
竹中・大洋・清興特定工事共同企業体
1998年12月
神奈川県鎌倉市
1933年竣工の木造校舎を核とする学校環境を継承しつつ新しい教育施設を整備した総合的なプロジェクトである。鎌倉駅に近い御成山の緑と校庭、木造校舎群が一体となった風景は地域に親しまれてきた。地下には古代官衙や中世武家屋敷の遺構が存在する。
計画の中心となったのは旧1号館の再生保存である。正面玄関ポーチや半円窓、連続アーチの廊下など旧校舎の象徴的意匠を実測調査に基づいて再構成し、長く親しまれてきた外観と空間の記憶を継承した。さらに小屋組や床梁などの構造部材を解体時に取り外して再利用し、内部空間に露出させて現在に伝えている。一方で、耐震・防火性能の確保や遺跡保護の条件を満たすため、木造と鉄骨・RCを組み合わせたハイブリッド構造やマットスラブ基礎が採用された。旧校舎の形態と記憶を継承しながら現代の技術条件の中で再構成した点に、この計画の設計思想の核心を見ることができる。
2号館などの新校舎は、旧校舎の配置やスケールを踏まえた低層分散型の構成をとり、木質空間を基調とすることで歴史的校舎との連続性を図っている。また校舎群を結ぶコンコースモールが児童の交流空間として計画され、オープンスクール型教室や多目的空間、メディアセンターとしての図書館など当時の教育改革に対応した学習環境が柔軟に導入された。こうして近代木造校舎の記憶と現代教育施設としての機能更新が一体的に試みられている。
25年賞の審査対象は久米設計によるこのプロジェクトであるが、しかし評価の視点は、1930年代の木造校舎の保存をめぐる高度成長期以降の紆余曲折を含む重層的な過去と、そして、以後も続けられるこの学校の環境整備の未来にも向けられるべきであると審査委員会としては判断した。
その観点から見ると、現在の御成小学校の環境はなお多くの課題を含んでいる。例えば1号館、講堂、そして多角形平面の図書館に挟まれた空地に近年やや無造作に設けられた倉庫は、この学校の重層的な歴史的価値への理解や配慮の不足を物語る。久米設計による計画も、1号館の保存は高く評価できるものの、新校舎群の設計には必ずしも明確な統一理念が感じられない面があり、維持も十分でない点が散見された。今後、歴史的建造物として価値の高い講堂の保存再生も日程にのぼるであろうが、それが学校敷地全体の歴史的環境を市当局と学校・市民が再度統一的に見直し、よりよい未来へと繋ぐ契機となることを期待して、この賞を贈りたい。
青井哲人