JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.348泰山館(KOSUGI PROJECT)
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竣工時 撮影:岡本寛治
現況
泉 幸甫/泉幸甫建築研究所
小杉 勇
多田建設株式会社横浜支店
1990年10月
東京都目黒区
この集合住宅の所在地は目黒区ですが、世田谷区駒沢公園に近い区境の閑静な住宅地に隠れるように建っています。周囲は戸建て住宅が建ち並び、南西側の隙間に開いたメインアプローチから北下がりの敷地なりにゆっくりと降りて行くと中央の中庭に導かれる。建物
は3層で敷地の高低差に沿って床レベルを少しずつ変えながら中庭をU字型に取り囲む。すでに竣工後35年が経ち、敷地内の樹木は豊かに育ち、良好な住環境を生み出しています。
建物にはさまざまな素材と共に細やかなデザインが施されていますが、いずれも竣工当時のように良好に維持されていて、設計者の泉幸甫氏と個人オーナーとの継続的で良好な関係を読み取ることができます。
メインの構造はRC造ですが、各住戸の入口扉は木製、中庭に面する外部廊下には敷き瓦、廊下上階の手摺は木製、下階は白に彩色された特注コンクリート花ブロックなど。また、各住戸の入口扉や脇の小振りなベンチはすべて個別にデザインされ、住戸プランもすべて異なるようです。木製手摺やRCの細い柱などには各所にポイント的な装飾が多く散りばめられていますが、いずれも控え目に抑制されていて、外部環境と合わせて物語性豊かな住環境を実現しています。
通常、個人のオーナーでしかもすべてが賃貸という集合住宅形式では、住み手の積極的な維持管理はあまり期待できず、全ては個人オーナーの裁量にかかってしまいます。この建物のように中庭まわりの樹木の定期的な維持管理をはじめ、さまざまな素材や細やかなデザインを施された建物を隅々まで良好な状態に永く保つには、大変な労力とコストがかかると思われますが、限られたメンテナンス費用の中でそれを実現されているのは、個人オーナーがこの建物環境を愛されていて、また、設計者が適切な時期を見極めながら積極的に維持管理計画を提案される、という非常に良い関係を築き上げている証で、その永年に渡る双方の努力と成果は十分にJIA25年賞に相応しいものと考えます。
当初のオーナーが代替りし、設計者も高齢化してきており、今後には若干の心配の種もありますが、この環境は集合住宅内部だけに留まらず地域の環境形成に大きな貢献をしているものと思われます。是非とも永く良好に維持していっていただきたいものです。
高橋寛