JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.350珈琲ロン
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竣工時 撮影:中村 保
現況 撮影:藤井雄平
設計:池田 勝也
改修設計:アソトシヒロデザインオフィス 阿蘓 俊博
(3・4階住居部分)
小倉 明
前島建設株式会社
1969年10月
東京都新宿区
新宿通りに面するRC打放4階建の複合建築である。1,2階は吹抜を介した一体的な珈琲ショップ、3,4階はオーナー住居として設計建設された。竣工は1969年10月、築56年の建築で、親子3代に渡り居住しながら経営を継続してきた。設計者の池田氏は当時第一工房に勤務中であり、高橋靗一先生の指導の元、設計監理に注力されたのであろう。RC打放の品質と完成度は素晴らしく、年月の経過を感じさせない仕上がりを保っている。流石である。交通量の多い新宿通りに面して中央の竪スリットの開口部だけが開かれているので若干閉鎖的で入り難さは感じるが、一旦内部に入ると外観からは想像できない広さと包まれた感があり、内装や家具、細部や素材の納まりも昭和の現代建築の手本のような温かみと美しさを備えている。照明器具の変更と空調機の追加はあるものの、今も建設当時の原型を保ちながら営業を続けていることは驚嘆に値する。50年以上に渡りこの空間が提供してきたものがオーナーにも客にも地域の人々にも大切にされ継承されてきたことは、小さな建物ではあるがその歴史的文化的な価値を如実に表している。
数年前に3,4階の居住部は改装され現在は建築主の孫世代が居住中である。改装設計は原設計者の池田氏ではなく別の設計者に依頼したそうであるが、その設計者が池田氏の設計であることを知り、設計思想を理解した上で、間仕切りと仕上材を剥ぎ取り打放RCを露出させ各階をワンルーム化する案を提案した。原設計の痕跡を残しながら既存材を適材適所再利用し空間を現代風に再構築している。小部屋に細分化された原設計より、原設計の設計思想をより強く感じることができる空間となっているように思えた。
新宿通りと外堀通りの交差点から僅か50mという再開発圧力が高まる立地において、4階建てのままで持続できるのか心配される所ではあるが、事業継承予定の孫世代はこの建築の魅力を充分に理解し価値を見出しており、店内ライブや写真展開催等を企画しこの建物の魅力を世間に広める努力を継続している。この建物を誇りに感じているので、この世代での建替は起こらないであろう。幸せな現代建築であり、JIA25年賞に相応しい作品である。
佐藤尚巳