JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.353霧島アートの森 アートホール
※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。
竣工時
現況
株式会社早川邦彦建築研究室
鹿児島県
竹中・堀之内共同企業体
1999年12月
鹿児島県姶良郡
この建物は1992年に鹿児島県が策定した文化ゾーン「霧島国際芸術の森基本構想」に基づき、1994年に竣工した霧島国際音楽ホール「みやまコンセール」に続き、1999年に早川邦彦氏の設計で竣工した建物です。槇文彦氏の設計した「みやまコンセール」は2022年にJIA25年賞に選出され、この「霧島アートの森 アートホール」は2025年のJIA25年賞に順当に選出されました。
いずれの建物も地域の人々の誇れる施設として愛され、大切に扱われているようです。特にJIA鹿児島地域会のメンバーは、詳細な報告書を用意してこの建物をJIA25年賞に推薦されていて、今回の現地審査にも車を用意して案内してくださり、地域の建築・文化資産をみんなで大切に育てていこうという心意気を強く感じました。
建物は彫刻作品が点在する広大な敷地の一角に、遥か遠方の桜島を焦点とする軸線の雄大なアート作品をアプローチとして、それに直交するゲートのように建っています。軸線を引込んだ部分を半外部的なエントランスホールとして、そこから先の屋外展示スペースや建物内の展示室、カフェ・ショップ、多目的ホールなどへと人々を誘導します。シリンダー状の建物先端部にはカフェ・ショップがあり、野外の展示作品を見ながら雄大な風景を堪能できるテラスが併設されています。内部展示室も彫刻作品に相応しくトップライトから大胆に外光を採り入れた明るい展示室で、外壁側にも外部空間との連続性を感じられるように開口が用意されていましたが、ここは、近年、内部収蔵スペースの不足もあって、展示壁として閉じた形で運営されているのは少し残念です。しかし、建物は全体的に美しく維持されており、大切に扱われていることを確認しました。
毎年の著名作家の特別企画展や一般の人々へのアート普及活動の充実は素晴らしく、広報・出版、調査・研究活動も報告書に詳細にまとめられており、運営者がこの建物を拠点に地域の文化育成に多大の貢献をされていることがうかがえます。欲を言えば、外壁の一部やエントランスホールの雨掛かり部分の床の黒ずみを清掃するようなメンテナンスの予算にも少し配慮して頂ければと思います。
また、今までにここで開催されたアートイベントや作家の作品の豊かな映像データが保管されていて、多目的ホールの一角で細々と上映されていましたが、ライブラリー機能をより充実させて、施設全体が現代作家の生のアート作品体験とその資料閲覧が同時にできる拠点的な場に育ってくれることを期待したいと思います。
高橋寛