JIA 25年賞・JIA 25年建築選
JIA25年賞 受賞作品
登録No.354新居浜市立別子銅山記念図書館
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竣工時 撮影:岡本公二
現況 撮影者:永禮賢
株式会社日建設計
建築主:住友グループ21社
(代表幹事会社 住友金属鉱山㈱)
現所有者:新居浜市
三井住友建設株式会社
1992年3月
愛媛県新居浜市
新居浜市立別子銅山記念図書館は、住友グループの21社が共同で建設し新居浜市に寄付された施設である。敷地北側に駐車場を置き、建築の東、南、西に建築を取り囲むように庭を配している。これは、元々敷地に建っていた泉寿亭の庭の築山や樹木を残し計画されたもので、市民に緑豊かな都市空間を提供している。建築は中央に中庭を持ち、それを囲む回廊によって、図書館棟とホール棟を繋ぐ構成で、中庭の中央には住友の屋号である「泉屋」を象徴する噴水を配している。回廊の床タイルは銅の精錬時に出る不要物を固めた「からみ」を利用した独特の荒々しい質感を持っている。このタイルと壁のタイルの目地がきっちりと揃っていて、この建築の精度の良さを表わしている。この厳しい精度は秩序を創り、中庭に静寂を与えている。しかしそれは人を排するような静寂ではなく、人を受け入れるものである。審査当日も子供たちが噴水で遊ぶ姿を見たが、その姿がとても愛らしく、この中庭の性格を象徴するものだと感じた。また、この中庭は柔らかな曲線の園路を持つ緑豊かな庭と対比をなし、残されたものと新たにつくられたものという関係も含めて、互いにそのイメージを強調する存在となっている。
ホールと閲覧室は共に楕円形の平面を持ち、小さな断面の鉄骨が創り出すドームは繊細さとおおらかさを共存し、シェードによって反射したトップライトからの光がさらにこの空間を豊かにしている。この大きな楕円形のトップライトは可動式で排煙口の機能を兼ねており、これも雑音を省き空間のイメージを明確にすることに一役を担っていると言えよう。閲覧室の窓際には読書用のカウンターがあり、深い庇によって光が制御された読書空間を提供し、緑豊かな外部空間へと視界が連続している。
メンテナンスも行き届き、特に庭の樹木の手入れは素晴らしく、この建築が長く大切にされていることを物語っている。全体を通して感心したのは、庭と中庭の関係、秩序が作る静寂、繊細さとおおらかさ、内部と外部の連続性といった設計時のイメージが今でも全く色褪せず新鮮に感じられることである。詰将棋のような緻密な設計がもたらす建築は時間の中で消費されることなく、時代性を感じさせない稀有な存在だと思う。正に25年賞にふさわしい建築である。
広谷純弘