JIA 公益社団法人日本建築家協会

JIAの建築賞

JIA 25年賞・JIA 25年建築選

総評

2023年度 総評

2024年1月1日、能登半島を激震が襲った。200人を超える方が犠牲になり、数万人が避難を余儀なくされた。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げ、一日も早い復興をお祈りしたい。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と日本が自然災害多発国であることを再認識させられた。今後も巨大地震の発生が予測されており、引き続き安全安心な建築や環境の構築に取り組まねばならない。
一方で建築には社会や文化をはぐくみ継承する役割も持っている。人々が育った環境、遊んだ環境、学んだ環境、暮らした環境、働いた環境、友人と楽しい時間を過ごした環境、そのような環境を形成しているのが建築である。人々の人格形成に少なからず関わり、人を育て、人と人を繋ぎ、社会を構成する背景に常にあるのが建築である。建築は人々の記憶をつなぎ、次世代に引き継ぐことのできる社会的な資産であり、文化的な資産でもある。建築家は設計行為を通して地域の誇るべき社会資産、文化資産を創造してきた。
しかしながら日本の近代建築は文化的な価値が認識されにくく、老朽化、維持管理の困難さ、耐震性、機能性、容積率等を理由に解体され建て直されることが非常に多い。他方で欧米の建築は文化財として市民に愛され、親しまれ、大事にされており、老朽化とは逆に年月を経るごとに価値が高まるケースが多い。時代に適合した機能に改修しながら大切に利用されている建築も数多くある。SDGsの11番目には「住み続けられるまち」12番目には「つくる責任、つかう責任」という目標がある。脱炭素が喫緊の課題となった昨今、大量の炭素を排出して建設される建物をより長く、より大切に、より上手に使うことは時代の要請に即した流れとなってきた。
JIAでは「25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築」を登録し、顕彰してきた。ここ数年は15から30の作品の応募と登録があり、その中から数点を25年賞として表彰してきた。25年以上の月日を経過しても尚、地域に貢献し、地域の人々に愛され、意義深い建物であることを改めて認定し表彰することで、建築が地域社会に中で果たしている役割や文化的な存在価値を広く認識していただく機会になれば幸いである。長寿世界一の日本に相応しく、長寿建築で日本の魅力を積み重ねていきたいものである。

佐藤尚巳