JIA 公益社団法人日本建築家協会

各種委員会・全国会議JIAまちづくり会議

まちづくり会議では、長年にわたり全国10支部で行われているまちづくりに関する取組みについて「良好な建築・美しい街づくりの仕組、萌芽事例シート」にまとめ、共有を行うことで行政への支援等に活かす活動を行っています。
各支部での取組みを見ていると、単に建物を建てておしまいというプロジェクトではなく、マスタープランの作成や住民参加の支援といった事例が増えているように感じます。これからの建築家に期待されることとして、単体の設計だけでなく周辺領域や関係者を意識した「まちづくりの視点」ということが大事になると感じています。

私が参加している関東甲信越支部の都市・まちづくり委員会では20年近くにわたり、土木のコンサルタントの協会である建設コンサルタンツ協会(JCCA)と共にまちづくりについて情報共有や協働のシンポジウム等を行ってきました。このような活動はまだまだ珍しい活動ですが、全国の支部にも共有しており地方でこそ土木と建築が一体となったまちづくりの視点が大事だという議論を行っています。また行政の方も土木や建築やまちづくりは一緒に考えなければいけないというところも少しづつ増えて来たように感じます。

会議での情報共有の新しい取り組みとして、昨年は先の萌芽事例の中から投票を行いそのプロジェクトに関わられた方から直接お話しを伺うという「萌芽事例オンラインレクチャー」という企画を開催しました。近畿支部から「洲本市炬口(たけのくち)地区まちづくり支援事業」と関東甲信越支部の「子安みんなの家」という二つの事例を取り上げましたが、萌芽事例シートではわからないまちづくり活動の苦労や工夫についてお話を聞けて大変有益でした。最近リアルな会議は開いていませんが、この様なイベントがオンラインで簡単に開けるのもコロナがもたらした良い効果かもしれません。

昨年から議論を始めているのが「まちづくりとカーボンニュートラル(以下CN)」ということです。JIAのCNへの取り組みでは四つの全国会議の関与が求められ、今年度のテーマは「まちとCN」ということでした。まちづくり会議でも議論を始めましたが単体の建築物のCNと比べなかなか話が大きくて明確な答えにたどりつけていません。国交省の都市局にまちづくりがCNに資する効果を聞いたところ、「コンパクトシティ」にまちを作り変えることだという回答でした。コンパクトなまちへの再編は建物のCNを超えて、運輸部門のCNにも寄与できるということで、郊外の中規模な公共施設や病院等をまちなか1か所に集約すると建物、利用者の移動合わせて60%のCO2削減になるという試算もされていました。よくよく考えてみると公共施設だけでなく、郊外からまちなかに集まって住むことで道路、電気、ガス、水道といったインフラにかかるCO2の発生を抑えることができ、加えてその維持管理費も削減できるというまちづくりならではのCN効果等が期待できると思います。先に触れた土木分野の人たちとも話を始めているのですが、インフラの改修によるCNについてはまだまだデータも揃っておらず継続して研究すべき課題と考えています。

最後に触れておかなければいけないと考えているのが、まちづくり会議の体制です。どうしてもJIAの会議なので単体の建築物を設計してきた人が多く委員になっており、最近はまちづくり関連の仕事に触れられる方も増えては来ていますが、各支部1期2年で委員交代になると会議全体でのノウハウの蓄積が進まないということが課題と考えています。4つの全国会議で状況は異なるとは思いますが、まちづくり会議に関わった人や外部のノウハウを持った人などをWG等で参加してもらい、会議の厚みを増すことでこれからの建築家に求められる「まちづくり」といった業際領域を強化したいと考えています。