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 JIA実務訓練に参加される皆様へ

2004年7月
(社)日本建築家協会JIA
会長 小倉善明

JIA実務訓練プログラムに参加される皆さんを心から歓迎します。
建築家の世界的職能団体である国際建築家連合(UIA)が1999年に定めた「建築実務におけるプロフェッショナルリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」に、建築家資格の基準が明記されています(注)。この国際基準と比較したとき、わが国の建築設計サービスのための資格「建築士」は、いくつかの点で国際水準に達していません。
JIAは、日本に、UIA基準と同等の「建築家」資格制度を作ることが急務であり、国民が諸外国の国民と同等レベルの建築設計サービスを受ける権利を守らなければならないと考えます。このことは同時に、日本の建築家が諸外国の建築家と同様に海外で自由に業務を行える環境を作ることでもあります。
UIA基準は、建築家資格を得るためには、透明で客観的な能力の証明が必要であるとしており、その方法として、「教育」、「実務訓練」、「能力の証明(試験等)」、「継続教育(継続職能開発)」の項目があります。
JIAは、その中でも「実務訓練」が、日本の「建築士制度」において不十分な項目であると認識しています。職能団体として、国際水準の実務訓練制度を作り、これによって国際水準の「建築家」資格制度を設立することを目指しています。
JIA実務訓練プログラムは、登録建築家である指導監督者の下で、建築家に求められる実務能力をオンザジョブトレーニング(OJT)で、もれなく経験することにより証明するものです。
皆様にとって、業務を行いながらそれを通じて建築家としての能力を養成していくことは、とても重要です。この実務訓練制度は、定められた業務を通して履修科目に記述された分野の能力を身に付けることが、効率的な職場教育になるものであるとご理解ください。
そのため、JIAは、実務訓練ノートを作りました。
JIAは、このプログラムが、皆さんが建築家としての一通りの経験をつむために、不可欠であると考えます。また、皆さんにとっても自分が建築家になるため、どのような能力が必要で、そのために何をしなければならないかを自覚し、人生における自らのキャリアを創る大変心強い手引きになると信じています。
このプログラムを3年で終える人もいれば、数年かかる人もいるでしょう。しかしこれはその長短を競うものではありません。
私は、皆さんが実務訓練プログラムを修了され、晴れて登録建築家として認められる日ができるだけ早く来ることを願ってやみません。


注:1994年、貿易の自由化に関し、マラケシュ協定という条約が結ばれました。これによって、WTO(世界貿易機関)が設立され、農業の自由化、さらにサービスの自由化も合意されました。
自由化が合意されたサービス業務の中に、「建築設計」サービスが含まれており、国内において「資格」によって規制された職能サービス(Professional Service、弁護士、建築士、医師、会計士など)の国境を越えた自由化が目前に迫ってきました。
日本建築家協会JIAは、国際建築家連合UIAの日本支部として、UIAがマラケシュ協定に基づいた建築設計サービスの国際化に対応する活動に、参加してきました。
UIAは、建築設計サービスの国際推奨基準(「建築実務におけるプロフェッショナルリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」)を作り、世界中の人々が享受するサービスの水準の目安を、明らかにしています。これにより、世界の人々が自由に一定水準以上のサービスの提供者を選ぶことができ、建築家が世界中のどの国においても各自のサービスを提供できる環境を作ることを目指しています。

国際建築家連合(UIA):世界の約100ヶ国の建築家協会が加盟する世界規模で唯一の建築家職能団体です。建築教育、建築家業務、居住環境等の向上、国際建築設計競技規則の作成、サステナブル建築の推進など、さまざまな活動を行っています。本部、パリ。会長、ジャイメ・レーネル(ブラジル)。

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