日本建築家大賞

2011年度 日本建築家協会賞 

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福良港津波防災ステーション

設計者: 遠藤 秀平(神戸大学大学院)
陶器 浩一(滋賀県立大学)
福良港津波防災ステーション 外観
撮影:遠藤秀平建築研究所
福良港津波防災ステーション 内部
撮影:松村芳治

遠藤 秀平

遠藤 秀平

陶器 浩一 陶器 浩一

 

 

 敷地は淡路島の南端、南あわじ市の福良港にあり、観潮船の乗り場や、
海産物等を販売する店舗のある淡路島有数の観光地の一画に位置してい
る。この敷地は一方では観光地という日常的な側面を持ちながら、他方
では兵庫県内で東南海・南海地震が発生した場合に予測される津波の影
響が最も大きいという非日常的な側面も持つ地域である。そのような状
況下で、港内に点在する水門の一括制御及び港内の監視、県内の小学生
や一般の観光客を対象とした津波に対する啓蒙活動を主な目的としている。
 これらの与条件から機能的に必要な空間を確保しながら、湾内を一望で
き、津波にも耐え得る形状と構造が求められた。平面的に6箇所の中心
を持つ連続した曲面壁を設定し、外力に対して合理性を持たせている。
曲面壁を鉛直方向に立体的に交差させながら閉合することで、必要とする
ヴォリュームを確保し、形状を決定している。
 構造体は多方向から押し寄せる津波に対して、応力の集中を避けるため、
曲面壁を採用し、建物全体を鋼板による面構造とすることにより合理的な
応力の伝達と軽量化を実現している。曲面壁は幅約7.2mx総延長約120mの連
続する帯状の鉄板であり、現場搬入の利便性、施工性、工期短縮を考慮して
約60枚に分割し、工場で1ユニット10mx2.4mの大きさにパネル化を行い、現
場溶接にてシームレスな構造体としている。
 構造は陶器浩一氏、ランドスケープは武田史朗氏との恊働により、日常的
に防災意識を回帰すこと、そして新しい港湾地区の風景を提示することを心
がけた。