日本建築家大賞

2010年度 日本建築家協会賞 

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長岡市子育ての駅千秋「てくてく」+千秋が原南公園+信濃川桜づつみ遊歩道

設計者: 山下 秀之 (長岡造形大学)

長岡市子育ての駅千秋「てくてく」+千秋が原南公園+信濃川桜づつみ遊歩道
撮影:山下真理子
長岡市子育ての駅千秋「てくてく」+千秋が原南公園+信濃川桜づつみ遊歩道内部
撮影:山下真理子

山下 秀之

山下 秀之

 「雪国の冬に子どもたちの遊び場」を、という森市長のビジョンのもと実現された。全国初の「建築と公園と土手をひとつにした子育て支援の場」ができた。建築は1年間で20万人の利用者を数え、全国からの見学者(特に行政、遠くは沖縄から)が今も絶えない。

 地元大学人の立場から、行政所轄のバリヤーを越え、公園/建築/土手、3者のユニバーサリティと活動リンケージを高める提案をした。土手と5mの高低差があったので、2haの公園全体を盛土して広大な緩斜面をつくり、1.2km遊歩道を建築につなげた。水平連続窓は、エリア分けの◯△□をトレースしながらパノラマをつくる。トラスは構造偏芯を抑える。

 市役所の皆さんが、いろいろと挑戦している。ドーナツ空間を円形劇場のように使ったミュージカルは見事だった。公園を組織する円形造園ユニットは「変位と交換」の有効な方法である。持続性のある「子育て公園」として、将来にわたる増改築もしやすい。外育(そといく)を主力とする子ども農園計画や食育プログラムも実行できる。母と子が苗を植えたサツマイモは、秋の収穫祭で立派な焼き芋となり、車椅子でさしかかった高齢者の方々のホホをふくらませた。場づくりは元気づくりである。

 設計に先立ち、市民検討委員会も複数回ひらかれ、何がどう必要であるのかを話し合った。設計は、建築:長建設計事務所+江尻建築構造設計事務所、公園:グリーンシグマ、遊歩道:長岡市公園緑地課とのコラボである(JIA会員である山下が受賞対象)。工事は豪雪期間をはさんでも全く遅れず、誠意に満ちあふれていた。設計作業には長岡造形大学の学生たちの多くが参加し、教育効果は計り知れない。最後に「てくてく」という愛称が、市民投票により決まった。「民」+「官・産・学」の華麗なフュージョンだった。