日本建築家大賞

2009年度 大賞

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大船渡市民文化会館・市立図書館/リアスホール

設計者: 新居 千秋  (株)新居千秋都市建築設計

大船渡市民文化会館・市立図書館/リアスホール外観
 
大船渡市民文化会館・市立図書館/リアスホール内部
 

新居 千秋

新居 千秋

岩手県の三陸地方にある本施設は、1100席のホールゾーンと、図書館、マルチスペース、アトリエ、和室、茶室、スタジオ等のファクトリーゾーンからなる文化複合施設である。当初から、「みんなで市民文化会館を創る会」を市民や役所の方々と発足し、市内調査ツアーや基本設計ワークショップ、機能や運営に関する検討会などを行い、模型やパースを用いてのコミュニケーションを積極的に行った。
プロポーザル時は、劇場とリハーサル室によって構成される施設であったが、ワークショップを重ね、機能の再チェックを行うと共に、市民の要望で図書館を付加することで、より活発な活動の場となった。また、「地域の形」をどう表現するか話し合い、「リアス式海岸、穴通し磯、海、空」からDesign scriptを作成した。
ワークショップでは建築家は特定の形、アイディアにこだわらず、ぼんやりとした中から、建築=空間の型を理解する必要がある。デモクラシーで決める部分と建築家が決めるべきこと、また、その時期を明確に理解すること等が求められる。それには、均質な空間やダイアグラムで明快に形成される空間とは違い、その場その場で求められる不均質な条件をハンドリングできる建築の手法と、それを許容できる空間の質、型が必要である。また、仮囲いに絵を描くプレイベント等を実施し、建築が建つプロセスが持つ「構築する力」で市民の意識を参加から参画(自分でどう使うか)へ、より親しみのある施設へとプロデュースした。
「みんなで市民文化会館を創る会」は後に、「企画運営委員会・施設検討」そして、「プログラム検討」へと移行し、現在では市民自らが事業を行う「自主事業実行委員会」へと発展している。結果として、人口4万人の街で開館後1年間で27万人が訪れる、賑わいのある施設となった。