JIA環境建築賞

第14回環境建築賞 総評

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14回目を迎えたJIA環境建築賞、応募は、55の多くを数えた。住宅部門が29点、一般部門が26点である。 第1の審査段階では、「JIA環境建築賞タスクフォース」が読み解いた個々の環境評価シートの結果を比較参照しながら書類審査を行い、一般建築部門、住宅部門それぞれ6点を候補作品として選出した。2000年の第1回JIA環境建築賞創設時からJIA環境行動ラボは「環境データシート」を開発し、応募者に提出を依頼するなど、審査の一部分を担ってきた。その後2010年に表彰委員会内にできた「JIA環境建築賞タスクフォース」がこの仕事を引き継ぎ、審査の事前準備や運営に携わっている。第2の審査段階は、委員が手分けし、複数の委員がチームをつくって、それぞれの作品を訪ねる現地審査である。地域の環境ポテンシャルがいかに活用され、建築として結実しているか、現地を見てわかることが実に多い。環境建築の審査ならではのことである。地域に溶け込んで活躍する建築家の活動ぶりに触れることもできる。訪問チームは、原則として建築家と技術家とのペアで構成され、異なった視点からの評価が、のちの審査での論点となることも少なくない。その報告会を経て、いよいよ公開審査会である。最初に、候補者がプレゼンテーションを行い、その後に、審査員が議論をしながら受賞作品を決めていくやり方である。公開審査についてはこれまでも是非の意見があったが、審査員が現地で考え、また感じたことを設計者当人の前で示しつつ、相互に議論を行いながら賞の選定を行う形式を、今回初めて採用した。予想したように議論百出で、もっと時間が欲しいと思ったが、一定の成果があったのではないか。公開審査会に参加された教育・表彰委員会委員長の堀越裕嗣氏が、高い評価をされた。 さて、環境建築賞の意義や特徴は何か。
JIAが他の建築関連4団体とともに、「地球環境・建築憲章」を制定したのは2000年。長寿命、自然共生、省エネルギー、省資源・循環、継承を課題とし、具体化する活動が始まった。10数年を経た今日、環境配慮の意識も定着したのであれば、環境建築賞の意義も消えたという意見が、JIAにあると聞く。しかしながら、環境と建築をめぐる議論はまだ未成熟と言わざるを得ない。それは、審査の過程にも見ることができる。
たとえば、省エネルギー・省資源は、環境建築が備えるべき条件である。この賞では、その応募にあたって、「JIA環境建築賞タスクフォース」の作成したフォーマットにしたがって「省エネルギー評価書」の提出が求められている。画期的なことであるが、この評価だけで賞が決まるわけではないということも重要である。事実、高評価のものが落選する場合もある。言い換えれば、環境建築の評価の文脈はきわめて多様だということである。その総合的な評価の基準はなお流動的であり、公開審査の意義は、多様な評価の在り方そのものを議論することにもある。さらに言えば、それゆえに、環境建築賞の存在価値があるのだといってもよい。
折しも、JIAの機関誌では、「建築・都市のパラダイムシフトーライフスタイルの転換」という20回のシリーズを終えた。タイムリーで充実した内容だった。そこで見直しを迫られたライフスタイルとは、大量のエネルギーと資源の消費によって支えられた20世紀のライフスタイルに他ならない。エネルギーや資源の呪縛はすでに、現在の社会や文化のパラダイムにまで深い根を下ろし、関わっている。指摘された人間と自然との関係の再構築は、環境建築のもっとも重要な、焦眉の課題でもあるのだ。 今回も多くの力作が集まった。受賞された作品の講評は、委員に譲るが、総じて堅実な、完成度の高い作品が多かったように思う。ふたつの最優秀作品は、この傾向を代表するものであった。「秘密のクリ園」、「Peanuts」は、新たな人間と自然との関係を問いかけた試みがあった。
公開審査の翌日には、環境建築のパイオニアともいうべき荒谷登氏(北海道大学名誉教授)の講演が行われた。「省エネは、住まいから寒さ・暑さを取り除くことの結果に過ぎず、冷暖房をすることを前提にしてその効率を競うのではなく、地域独自の文化や、精神的な豊かさを表現することが重要だ」と説かれ、環境建築にふさわしいシンポジウムとなった。

審査委員長 小玉 祐一郎