JIA環境建築賞

第6回環境建築賞
 
 総評 審査委員長 野沢 正光
 
本年度の環境建築賞には一般建築部門に32件住宅部門に16件の応募があった。数年来のことではあるが、環境としての建築を解く手法は様々に展開し一般化しつつあり多くの建築家が建築の作り出す空気質、温熱など室内気候、自然エネルギーの持つ底力になどをデザインのツールとしつつある。本賞もそうした時流のサポートを担うことができているのではないかと自負している。
今年はそうした中で地域の自然環境の持つ特色を道具とするものに面白いものがあった。昨年の奄美病院が開放型の冷熱蓄熱を道具とする南方型気候という地域特性によっているものの好例であったとすれば、今年の応募作品に二例の雪利用事例があったのは本年の特長であったといえよう。その中で横手の学校の事例は雪による冷房を無駄のないプログラムで解決する好例であった。雪冷房はかなり確立したデザインツールになっているようである。言うまでもないがこうした効果的なツールは建築を地域ごとの特徴を持ったものとする重要な道具であろう。
小室氏の住宅、PC工法を外断熱と組み合わせる豊嶋氏の建築など地域のポテンシャルが建築をポジティブに表出する事例も面白かった。北海道の建築家の長年の工夫は私が注目してみているものでもあるが今後もこの地域の建築家が数多く本賞へエントリーされることを期待したい。
大型の建築に自然換気が積極的に効果的に使われる自例などには今後の環境建築の可能性への確実な実感を盛ったし、また博覧会施設が事前にその後恒久施設としての使用をプログラムとしてもち、しかもパビリオンとしての部分の部材の多くをリースによっていると言う事例の戦略と実効の面白さにうなった。建築が考えるべき事柄考えることにより建築をより面白いものにする工夫はまだまだたくさん存するのであろう。今後の発見が楽しみである。
環境建築賞は幅と奥行きを広げつつある。数年間受賞者のなかった最優秀賞が各部門から選出されたことを喜びたい。
毎回審査を通じ各位にお手数をおかけしている。そして私自身数多くの示唆をいただいている。そのことに感謝したい。
建築の表情は様々な要因によって現れるものである。私は今後一層環境技術の深化が建築の表情を変え細大の根拠になることを夢見る。環境と建築の一体としての解、それが私たち建築家の大きな主題ではないかとさえ思う。地域的な工夫、プログラムの発見が新たな建築の姿をその考察の結果として纏う、そうした独創のトライアルを課題としたいと思う。