※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。 一般建築部門　　優秀賞 Honda和光ビル 　 設計者： (株)久米設計（平倉章二・児玉耕二・山本茂義・井上宏・小塩智也・三浦洋介・田村富士雄 　　　　　　　　　 横山大毅・織間正行・小玉敦・梶川直樹） 建築主： 本田技研工業株式会社 施工者： (株)竹中工務店 新菱冷熱工業(株) (株)関電工 講評： この建物の訪問者にとって、最も印象的なことは、地上階のアトリウムに立った際に見られる光景である。アトリウムを忙しそうに横切る人がいるかと思うと、その片隅では立ち止まって話し込んでいる人々もいる。また、視線を上方に転じると、アトリウムに斜めに架けられたブリッジの上を足早に通りすぎていく人が見られる。そして、アトリウムに面する各階の事務所空間からも人の気配が伝わってくる。そこには、まさに、施主企業が奉じる「共創」を具現化した、コミュニティの装置としての建築がものの見事に実現している。雑誌発表された無人の建築空間写真と、人々が中にいる際にこの空間が持ち始める「生き生き」した雰囲気の落差はあまりに大きい。プログラムの複雑さに臆することなく、明確なダイアグラムを確立させたうえで、さまざまな建築的な環境制御手法をインテグレートさせていった設計者の技倆の高さと清心さがあったらばこそ、このような素晴らしい空間装置が成立しえたといってよい。ペリメーターを環境調整装置としてとらえ、そこに執務空間をあえておかなかった計画など、２１世紀の事務所建築のあり方について示唆に富む作品として高く評価したい。 　 （野城智也）