JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.168

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百十四ビル

百十四ビル
竣工時
百十四ビル
現況
 
設計者: 株式会社 日建設計
建築主: (竣工時)株式会社百十四ビル
(現 在)日本橋不動産株式会社
施工者: 株式会社 竹中工務店
竣工年: 1966年11月
所在地: 高松市
講評:

 現地審査の前日に、近傍にある丹下健三の名作、香川県庁舎旧本館の屋上から百十四ビルを遠望する機会を得た。旧本館の屋上は、竣工(1958年)からしばらくは市民に開放され360度のパノラマが楽しめたようだ。現在、瀬戸内海を望む北側は隣接する建物に遮られているが、東側は視界が開け、中央公園越しに百十四ビル(百十四銀行本店)の、凜としたブロンズのファサードが目に飛び込んでくる。旧本館の8年後の1966年に竣工した地上16階の百十四ビルは、当時、西日本一の高さを誇り、かつては香川県庁舎旧本館同様に屋上が開放され、最上階にティールームがあった。現在も近接するビルよりは高いが、なにより公道を跨いで水平に延びる低層部と、そこから分節された開口のない高層部の秀逸なプロポーションが目を引く。
 設計者の薬袋公明(1926-2007)は、当時、日建設計(当時の社名は日建設計工務)大阪本社の設計監理チームを率いるリーダーであり、百十四ビルはその代表作である。1961年から始まった百十四ビルの設計において薬袋は県庁舎を強く意識したのだろう。低層・高層の構成、躯体とスキン、ピロティの扱い、前面道路との関係、そして官と民など、香川県庁舎と百十四ビルにはいくつもの対比を見ることができる。薬袋は時間に耐える社会資産としての建築を標榜していたが、その想いは地域のナンバーワンバンクとして経済を支えてきた建築主にとっても同じであった。
 かつて宇高連絡船から見えた百十四ビルのシルエットは、多くの高松の人びとにとって、帰るべき場所のシンボルであったに違いない。そんな人びとの愛着ゆえ、常にメンテナンスされ(1999年に耐震補強、2011年に南北面のブロンズサッシを保全しながらダブルスキン化)、美しく保たれることは至極当然のことだった。百十四ビルはこれまでJIA25年賞を受賞した中でも、とりわけ「幸せな建築」だと思う。

  (大森 晃彦)