第15回日本建築家協会25年賞

■ 総 評

審査委員長 芦原 太郎

 本年度のJIA25年賞はリニューアルされ、全国10支部が選定する<JIA25年建築>を登録し、その中から審査委員会が<JIA25年賞>を選ぶ2階建て形式となりました。JIA25年建築の新設により地域にある数多くの建築を選定して賞の裾野を広げていく事を目指し、一方JIA25年賞は社会に訴える発進力の強いものに厳選されることになりました。本年度の審査はJIA25年建築に選定された28件を対象に書類選考により現地審査を行う7件を決定し、審査員が手分けして現地に赴き関係者からのヒヤリングを行った上で、水戸芸術館、新宿三井ビルディング、大阪ガスビルの3作品がJIA25年賞に選定されました。
 審査にあたってはその建築が25年の歳月を経て社会資産としてどれだけの価値を築いてきたかを問い、建築を一人の建築家の作品としてではなく、建物の設計・施工・維持管理といった一連の行為として捉らえ、以下の9つのクライテリアを念頭に評価を行いました。
 ・建築に込められた建築家の思想が現在も尊重されていること。
 ・人々の記憶に寄与する建築であること。
 ・建築の価値を社会に広めてきたこと。
 ・設計された時代を象徴するような技術を保持していること。
 ・建築が美しく保たれていること。
 ・過去の保全、改修の記録が残っていること。
 ・未来に向けた長期的な保全計画があること。
 ・地域社会や周辺環境へ貢献していること。
 ・所有者、設計者、施工者、管理者の連携が現在もよく取れていること。
 <水戸芸術館>は竣工当時から話題の建築でしたが、現在は自主公演などを含む活発な芸術活動が定着しており明らかに水戸における重要な文化拠点となっています。
 <新宿三井ビルディング>は新宿西口副都心で、超高層ビルと足元の広場と言う当初の理念が成功し、広場空間と商業施設や樹木等が一体化して副都心の貴重な公共空間としてオフィス街に潤いを与えるものとなっています。
 <大阪ガスビル>は1933年竣工の旧館に上手く調和する形で1966年に新館が増築され、双方相俟って御堂筋のシンボル的近代建築として歴史文化を感じさせる町並み形成に貢献しています。
 これらの受賞作品はその背景や社会における存在意義も異なるものですが、いずれも人々に愛される社会・文化資産となっていることは明らかです。JIAはこのJIA25年賞を通して、社会資産としての建築の姿や建築・まちづくりに貢献する建築家の役割を広く社会に訴えて行く事を目指しています。地域には人々に愛されながら長年頑張ってきた建築が数多くあるはずですので、来年以降更に多くのJIA25年賞への応募を期待したいと思います。