第15回日本建築家協会25年賞

■ 大阪ガスビル(新館/北館) 講評

審査委員 大森 晃彦

 「大阪ガスビル」といえば1933年に竣工した歴史的名作。築後80年以上経っている。何で、と思い資料を拝見すると、応募対象は1966年に北側に増築された北館(新館)で、竣工後50年を期してのことだった。安井建築設計事務所の創設者、安井武雄の代表作として知られる当初の「大阪瓦斯ビルディング」は現在、南館と称されている。発表時、「使用目的及び構造に基ける自由様式」と記されたそのデザインは、新しい建築潮流を映しつつ、建築家の想いと感覚が込められた名作であり、日本で最も美しい都市街路のひとつである御堂筋の顔となっている。
 33年の年を経て北館を設計したのは佐野正一。街区の1ブロックを1建物とする4面ファサードの現在の姿を完成させた。構造的には分棟で、エレベータホールでのみ新旧の動線が接続する。佐野は設計にあたって、旧ビルの要素を「そのまま延長するのでなく全体の風格なり美しさとしてとらえて新ビルに生かす」という方針を立てたと記しているが、そこに生み出されたものは、新旧が一体となった都市建築の成熟であった。全体の風格と美しさ、そして建物の機能が、愛着を持って維持管理されていることに敬意を表したい。

審査委員 堀越 英嗣

 大阪ガスビル新館は名作の誉高い旧館とともにイチョウ並木が美しい御堂筋の都市景観形成のリーダーとして長らくその役割を果たしてきている。日本では珍しいブールバール(Boulevard)である御堂筋は100尺(31m)の高さ制限の街並が1929(大正9)年に施行された市街地建築物法によって形成された歴史がある。安井武雄設計の端正で美しい旧館への増築として新館は佐野正一によって設計され、1966年に竣工している。それ自身完結したデザインの旧館に増築するにあたり、御堂筋の景観的シンボルである旧館のデザインと高さを継承しつつも時代にあった新しさを注意深く考えられたディテールとして加えるという、クリエイティブでありながら一体となるデザインとする方法を選んでいる所に、佐野正一の深い精神性と哲学を感じる事ができる。
 近年、多くの近代建築が人々の記憶とともに簡単に消え去っていく中で大変貴重な存在である。現在まで新館・旧館ともに、あたかも何も変わっていないかの様に見える巧みな改修は、クライアントによる維持管理の大切さへの理解と安井建築設計事務所の設計者としての誇りと誠実な対応により実現されている。御堂筋を行き交う人々の心に深く刻まれる美しい街並の記憶という、都市建築の持つべき本質的価値をつくり続けていることの重要性が高く評価され、JIA25年賞に選定された。