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公共建築設計懇談会QBSの報告書を公表
公共建築設計懇談会(国交省、東京都、神奈川県とJIA、、日事連、士会連合会の 設 計3団体が構成する懇談会)では、一昨年のUIA北京大会でQBS(資質評価方式)が 世 界共通の望ましい設計者選定方式として採択されたこと等を踏まえて、勉強会を設 け て検討してきたが、4月16日に本委員会を開いてその報告を聞き、了承するとと も に報告書を公表した。現在の会計法、自治法の下ではQBSを完全な形で実施するこ と は困難との認識を前提にしながらも、QBS方式の実施方法の詳細や、実施上の問題 点 等を突っ込んで検討している。
以下に「QBS勉強会報告書」の全文を紹介する。

資料−2

QBS(Qualification Based Selection,資質評価方式)勉強会報告

1 検討の背景・目的

1999年に北京で国際建築家連合(UIA)大会が開催され、「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」が採択された。この協定において、設計者選定の方法として「特命方式」、「設計競技式」とともにQBS方式が推奨された。公共建築設計懇談会新設計プロポーザル検討部会においても、この協定で推奨されたQBSについて情報交換が行われた。

この設計者選定方式については、米国における連邦政府のほとんどの発注がこの方式で行われており、州政府や公共団体の多くもこの方式を採用していること、英国においても最近公共建築の設計者選定に採用されるケースが多く、民間にも急速に普及しつつあるとの情報が受託者側から報告された。
また、公認会計士のサービスでは国際的職能団体による推奨基準がWTOの協定に採用された例もあり、受託者側から今後QBSがWTOに採用される可能性も高いとの指摘もあった。

これらの状況をふまえ、1999年7月に開かれた公共建築設計懇談会において、QBSについて部会を設け検討を行うこととした。ただし、QBSについての概要を検討した結果、会計法との整合性の問題、政府の「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画」との整合性の問題が予想され、この方式の採用にはこれらの法律の改正等が前提となることから、QBSの導入推進を前提とせず、将来対応が必要となる場合に備え、あらかじめQBSの実施方法の詳細の確認や問題点等の検討を行う勉強会を開催することとした。

2 公共建築設計懇談会QBS勉強会委員構成
国土交通省 大臣官房官庁営繕部 建築技術調整官 玉 井 龍 男
(建設省)   建築課企画専門官 田 中    晃
    建築課課長補佐 吉 野  裕 宏
      (徳 田 京 誠)
  住 宅 局  高齢者・障害者対策官 安 藤  尚 一
      (田 中 淳)
東京都 財務局営繕部 技術管理課長 室 木 真 則
      (南 部 敏 一)
    技術管理課建築技術担当係長 手 塚 賢 一
神奈川県 総 務 部 技    監 花 方 威 之
    建築工事課長 縄   紘 次
(社)日本建築士事務所協会連合会 (社)東京都建築士事務所協会 理事 西 倉   努
    専務理事 鈴 木 俊 夫
(社)日本建築士会連合会 教育・事業委員会員 大 武 通 伯
    専務理事 内 藤   尚
    常務理事 上 口   隆
(社)日本建築家協会 建設産業基本問題委員会委員 倉 橋 潤 吉
    産業委員会WG主査 山 際 二 郎
    専務理事 中 田   亨
    事務局主任 田 辺   晃

3 検討の経緯
平成12年2月3日から平成12年12月7日まで5回の勉強会を開催し検討を行った。
第1回の勉強会(2月3日)では、JIAが平成11年8月に発表したQBS導入を含む「入札に変わる設計者選定方式の提言」の説明と検討の進め方について意見交換した。
第2回の勉強会(3月3日)ではJIAの委員から「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」のガイドラインである建築家の「資質に基づく選定」に関するガイド:品質への鍵(UIA/QBS)について説明が行われ、意見交換を行った。
第3回の勉強会(4月11日)では東京都から提出された「QBSに関する質問事項」、建設省から提出された「QBSに関する問題点等」、JIAから提出された「QBSに関する見解と今後検討したい事項」に基づき意見交換を行った。
第4回の勉強会(9月12日)では建設省から提出された「QBS(資質評価方式)勉強会取りまとめ案」、JIAから提出された「公共建築設計懇談会QBS勉強会取りまとめ」に基づき意見交換を行った。
第5回勉強会(12月7日)では建設省から提出された「QBS(資質評価方式)勉強会取りまとめ(調整案)」に基づき主な論点について意見交換した。

4 検討内容
検討に当たっては、入手したUIAの 建築家の「資質に基づく選定」に関するガイド:品質への鍵(UIA/QBS)、JIAの「入札に代わる設計者選定方式の提言」にまとめられた「資質評価方式の運用基準」及びアメリカにおける実施例を資料としたが、実際のQBSに参加した経験者を探すことができなかったため、運営の細部に関する詳細な検討を行うことはできなかった。
検討の結果は以下の通りである。

 (1) QBSの定義
勉強会において検討の対象を明確にするため、以下の方式を検討対象とした。
・「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」のガイドラインである建築家の「資質に基づく選定」に関するガイド:品質への鍵(UIA/QBS)(資料1)
・JIAの「入札に代わる設計者選定方式の提言」にまとめられた「資質評価方式の運用基準」(資料2)

 (2) 公共建築の設計業務の調達にQBSを導入する場合の法令上・制度上の問題点
検討の結果、公共建築の設計業務の調達にQBSを導入する場合には以下のような問題点が指摘された。従って、QBSの導入に当たっては、以下の問題の解決が必要と考えられる。

  ① 会計法、地方自治法に関する問題点
会計法、地方自治法においては、交渉順位者を技術競争により決め、その順位に基づき価格交渉するという契約方法は規定がなく、会計法上の契約形態として競争入札なのか、随意契約であるのか不明である。競争入札の競争条件や、会計法上許された随意契約の要件のどちらも満足していないと考えられる。
このような会計法等に規定のない契約方法は認められていないと考えるべきである。
また、会計法では、業務内容と価格とを増減させる価格交渉(いわゆネゴシエーション)は認めらていないと解釈されている。
会計法で許されるのは、業務範囲の決定後、価格の申し込み前に、業務仕様書等により具体的な作業量を詳細に協議、確認したあとに、受託者が価格の申し込みを行うものと考えられる。(この価格の申し込みは、通常、後日の説明責任を果たすため書面により提出されている。)
従って、現行の会計法、地方自治法及びその運用等で認められる業務量と価格の交渉はこの範囲に限られることから、QBSで想定する自由な価格交渉は現時点では不可能と考えられる。
この問題点について、受託者側からは、QBSの導入を図るため法改正を求める強い意見が出された。

  ② 制度上の問題点
政府の「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画」(1994年)においては、同行動計画で規定された基準額以上の設計業務は、公募型プロポーザルまたは、公募型入札により調達することとされており、QBSを実施するためには行動計画の変更が必要である。
また、QBSはWTO政府調達協定(1996年1月1日発効)上、協定第7条に規定された限定入札の契約手続きと整理されるが、同協定第15条で規定されている限定入札が許される場合の条件を満たしていない。
従って、WTOで定める基準額以上の設計業務については、採用できないものと考えられる。
しかし、WTO協定に参加している米国等の公共建築設計業務の調達においてはQBSの採用例があるとの報告もあり、詳細な調査が必要である。
  (参考)
WTOにおいては、設計競技の当選者との随意契約は、同協定第15条において独立の審査員団により審査される設計コンテストの受賞者と契約する場合として認められている。 一方、国土交通省で行っているプロポーザルは審査が独立した審査委員団によるものではないので、第15条による限定契約としては整理されていない。プロポーザルは特定された技術提案書の著作権が排他的権利に当たることから限定入札としている。


 (3) 実施上の問題点
  ① 他の選定方法との使い分けについて
設計業務にはプロジェクトごとに性格、条件等の特性が異なることから、一つの設計者選定方式をすべての設計業務に適用すると問題が生じる。
建設省官庁営繕部の建築設計業務設計者選定要領やJIAの「入札に代わる設計者選定方式の提言」においても、設計業務の特性を勘案して適切な選定方式を選定することとされている。
具体的にはUIAではQBS、特命方式、設計競技方式の3方式が推奨され、JIAでは特命方式、設計競技方式、プロポーザル方式、資質評価方式(QBS)の4方式を推奨し、プロジェクトの特性により最も適切な方式を選定することとされている。ただし、どの方式がどのような特性に適しているかはいっさい示されていない。建設省官庁営繕部の建築設計業務設計者選定要領では、特命方式、設計競技方式、プロポーザル方式の3方式からプロジェクトの特性に応じて選定することとされ、選定のガイドラインが示されている。
以上のように、QBSについてはどのような特性の業務に適用することが適しているか必ずしも明確にされておらず、明確にする必要性が確認された。
この使い分けが明確にされない場合、公共建築設計懇談会として地方公共団体等に対してプロポーザルの普及と適切な運用を積極的に働きかけている中で、地方公共団体等に無用な混乱を引き起こすおそれが強いとの懸念が表明された。

受託者側からは、QBSは規模の大小や内容に拘わらず、そのプロジェクトの特性に応じた評価基準により、多様なプロジェクトに対応できることと、プロポーザル方式が現在適切に実施されておらず、設計者側に大きな負担を強いている状況を解決するために、QBSの広範な導入が必要との主張がされた。

一方、発注者側からはプロポーザル方式が適切に運用されていないのと同様に、新方式が適切に運用される保証のないことを考慮せず、QBSが適切に運用されること前提として、プロポーザルの不適切な運用による問題を解決できるという受託者側の主張には合理性が乏しいとの意見が出された。
また、受託者がQBSの利点をプロポーザル方式との比較で主張したのに対して、発注者側からプロポーザル方式がQBSであるアメリカ連邦調達庁(GSA)のGSA方式を参考として国内法との整合を図りまとめられたものであることから、発展性のある議論とはならないとの意見も出された。これに対して、受託者側から国内法との整合を図ったところに問題が生じていないか検討する必要があるとの意見が出された。

  ② 契約対象となる業務の範囲について
QBSの特徴の一つは、技術的評価の順位により交渉順位を決定後、第一位の者から業務内容・範囲と価格の交渉を行うことにあるが、我が国においてはアーキテクトとエンジニアの資格が分かれておらず、建築士法により建築設計にかかるすべての業務を1級建築士が業務独占しているため、アメリカのように設計業務を分割することも含む業務範囲設定の考え方はなじまないとの指摘が発注者側からあった。
また、日本の官公庁においてはPM業務をインハウスで行い、事前に整備プロセスにおける各業務の発注形態を定めた上で予算要求を行っているため、設計者選定の段階で整備プロセスのどの段階を委託するかを決定することはない。
したがって、日本の官公庁における設計者選定段階での業務範囲の調整は、設計業務のうち告示1206号に規定された設計業務と特別業務及び関連する業務の範囲の中で調整されることになるのではないかとの指摘も発注者側からあった。

交渉を行う業務範囲についてはCMの導入の検討状況も勘案しつつ、我が国の発注体制と整合させながら、ガイドラインを示す必要があることが確認された。

  ③ 評価基準について
QBSは設計者の資質を評価する方式として位置づけられ、設計者の「資 質」が主要な評価項目にあげられているが、UIAの「品質への鍵(UIA/QBS)」、JIAの「入札に変わる設計者選定方式の提言」にまとめられた「資質評価方式の運用基準」においても「資質」の定義が必ずしも明確ではなく、その具体的評価方法も明確にされていない。今後詳細な検討を行う場合、議論の混乱をさけるため、これらについて明確にする必要性が確認された。

  ④ 若手建築家の参入機会の確保について
JIA「資質評価方式の運用基準」の「2.5評価基準」においては、「設計担当者の資質や人柄を重視する(例えば、発注者との協同関係において良好なチームを築けるか等)」と抽象的に示されているだけであるが、このJIAの基準に基づくと以下のような問題点があることが発注者側から指摘された。
技術提案を求めず、専門技術職員の状況、業務の実績、担当者の資格・経験・業務実績・手持ち業務の状況、業務実施体制とヒアリングによる設計担当者の資質や人柄(発注者との協同関係において良好なチームを築けるか)という評価項目で評価を行う場合、発注者の恣意性を疑われる可能性が高く、客観性確保の観点から専門技術職員の数や過去の実績等を重視し、評価が定まる可能性が高い。この場合、実績のない若手設計者が閉め出される可能性が強い。
プロポーザルの評価項目の設定に当たっても、若手設計者を中心として実績重視をやめ、技術提案の評価ウエイトを増やすよう強い要望があったところである。この要望に反する結果となる。

この指摘に対して、受託者側から、資質の評価のウエイトを増やせばこの問題も解決されると言う意見が出されたが、資質が前述のような、いわゆる発注者との「相性」であるならば、公共発注機関が恣意性がなく、客観的であることを説明することが困難となり、過去の実績に頼らざるを得なくなることが予想され、解決策とは考えがたいとの指摘が発注者側からあった。
また、実績の少ない若手の設計者にはコンペで参入機会を確保できるという指摘があったが、コンペの件数が公的発注機関で増える傾向がみられない現状では解決策とはなりがたいとの指摘が発注者側からあった。
  (参考)
平成10年に建設省で実施した調査によれば、地方公共団体の発注のほとんどが入札であり、今までコンペで実施されてきたものが、プロポーザルに置き換わっているのが実状である。
また、同調査によれば、今後プロポーザルを大幅に増やす計画がある自治はみられなかった。


  ⑤ 選定結果のアカンタビリティ
QBSでは、ヒアリングによる評価のウエイトが大きいことから、発注者側から評価の公平性・客観性を説明できる資料が著しく少ないため、応募者の評価に対して公共発注機関に強く求められる客観性の証明(アカンタビリティ)の点で問題があることが指摘された。
また、評価の要点や評価項目となっている「発注者との協調性」、資質や人柄(発注者との協同関係において良好なチームを築けるか)についての評価を主体としたのでは、発注者の恣意性を疑われ、公平性・客観性を説明することはできないとの指摘や、QBSで要求されている資質証明の資料、照会者からの情報、インタビュー程度の情報では設計事務所間で有為な差異が出ないのではないかとの指摘もあった。

受託者側からは、提言した資質評価方式の運用基準は今後詳細に検討し詰めることや試行が必要と考えているが、客観性に重点を置きすぎる評価基準によると誰が選んでも同じ結果になるという主張があった。また、QBSに限らずすべての選定方式において、選定の体制、方法、基準、過程、理由、結果がすべて公表されることによって審査(評価)の客観性、アカンタビリティが担保できるという主張もあった。

この意見に対して、発注者側から選定経過と結果のすべてを公開することは透明性の確保にはなるが、理由を客観的な根拠に基づき説明できなければアカンタビリティを確保したことにはならないという指摘があった。また、客観性とは条件が同じであれば、誰が行っても同じ結果(もちろん事業ごとに発注者が異なり、設計者に求める条件が異なることから、各事業ごとに異なる結果となる。)となることではないかとの意見が出された。

以上のように評価方法の詳細を詰め、選定の客観性、アカンタビリティをどのように確保できるのか、具体的に検討することが必要であることが確認された。
  (参考)
「発注者との協調性」、資質や人柄を評価項目に入れることは、プロポーザル方式の検討の際に、設計者団体側から提案されたが、前述した客観性の観点から採用されなかった経緯がある。


また、QBSにおいては、評価の難しい「資質」をインタビュー等を中心として評価することから、審査委員の能力、責任が重くなることが予想される。UIAの規定では、「委員会は、決定に対する疑義が生じた場合に備えて、決定のプロセスすべてを記録し文書化すべき」とされている。審査委員会の責任はコンペ、プロポーザル、QBSを問わず重要なものであり、審査委員の選定の重要性とその責任と権限の明確化の必要性を関係者に訴えていくことが重要であることが確認された。

  ⑥ プレゼンテーションについて
プロポーザルでは、技術提案としてプロジェクトのデザインのアプローチを書面にまとめて提出することにしている。プレゼンテーションは文章を主体として、補足的に図、ダイアグラムを用いることを認めるという制限が行われているが、実際には発注者は評価のしやすさと説明のしやすさから、また受託者は競争に勝つこと優先することからこの制限は守られず、過剰なプレゼンテーションを招いている。このため、大規模設計事務所では年間2億円を超える負担を強いられ、経営が圧迫されているが、QBSでは、技術提案を求めないためプレゼンテーションが過大となることはなく、この問題が解決できるという指摘が受託者側からあった。

発注者側からは、QBSでは発注者はヒアリングの際具体的デザインを求めてはならないが、デザインのアプローチをただすのは適切であるとされていることから、外国の実例でもヒアリング時のプレゼンテーションが過剰になる傾向が弊害として報告されており、プロポーザルで守られないプレゼンテーションの制限が、QBSで守られると言う合理的説明は難しいとの指摘があった。

QBSにおいても、プロポーザルと同様、過剰なプレゼンテーションを排除する実行ある手法の確立が必要となることが確認された。

  ⑦ 価格及び業務範囲に関する交渉について
    [法的問題点については(2)①による。]
QBSでは、提出された資質証明書とヒアリング(インタビュー)の審査結果により候補者を順位付けし、第一順位者から業務の範囲とそれに応じた価格の交渉を行い設計者が決定される。QBSでは、この交渉により業務に見合った費用が確保されることから、適切な業務の実施が確保されるとされており、このことがQBSの最大のメリットとされている。
しかし、(2)の法的・制度的問題点で述べたように、会計法では、価格が折り合わない場合に、業務量を減らし価格を調整するなどのような業務量と価格とを調整するような価格交渉は許されないと解されている。
一方、設計料については大臣告示1206号が示されているので、業務の説明が適切に行われ、具体的な作業量が発注者、受託者双方で誤解なく理解されれば、具体的作業量に応じて算出される予定価格と受託者が算出する設計料が大きく異なることはないはずである。
ところが、現実には業務量に見合う適切な設計料が支払われていないと設計者団体は主張している。この原因については、発注者側の業務量に対する評価が低く、設計者側の理解が得られない状況で価格の申し込みを求め、予定価格を下回るまで価格の提示を求めることにあるという指摘があった。また、総じて発注者の予定価格が業務量の実態からみて著しく低いという指摘も設計者団体からあった。
この状況は、設計者の特定後にその技術提案に応じて、受託者と充分に作業手順、業務量を確認し業務仕様を調整する必要があるプロポーザルにおいても変わらないと指摘されている。このことは、業務に関して具体的な作業量等について充分な説明と確認が行われていないためと考えられる。
このような説明と確認を行い作業量の実態を正しく反映した予定価格を作成するという認識が確立されない状況で、価格・業務の交渉を導入しても、そのプロジェクトに最もふさわしい能力で設計者が選ばれるのではなく、実際の業務量から乖離した低い価格を提示する設計者が現れるまで交渉順位により価格だけの交渉を続けることになり、実態としては価格だけの入札と変わらなくなる危険性が高いことが確認された。
また、プロポーザルでは、特定された設計者が特命随意契約の契約相手方という競争相手のいない、ある意味で強い立場にいながら、交渉によって業務量に見合った設計料で契約できない状況であるならば、優先交渉権を持つだけという、プロポーザルで特定された場合と比べ弱い対場の設計者が適正な設計料を確保できると考えることには無理があり、最悪の場合は、入札にQBSの隠れ蓑を与えることにもなるという指摘もあった。

検討の結果、業務量に見合った適切な設計料の確保には、作業量を相互に確認し、作業量の実態を正しく反映した予定価格を作るという認識の確立が最も重要であることが確認された。

 (4) 今後の課題
WTOの改定交渉の中では、現在のところQBSの採用を求める声は出ていないが、国際化の進展に伴う状況の変化に注視するとともに、我が国における設計者選定のあるべき姿を検証していくことが必要であることが確認された。
今回の検討では、QBSに実際に参加した建築家を探すことができなかったため、実際の運用の詳細について確認ができず、検討の範囲が限られた。今後は実際に参加した建築家からのヒアリングを行うなど、今回明らかにならなかった実態を詳細に調査・検討する必要があることが確認された。

 資料
資料1 「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定」のガイドラインである建築家の「資質に基づく選定」に関するガイド:品質への鍵(UIA/QBS)

資料2 JIA「資質評価方式の運用基準」(「入札に代わる設計者選定方式の提言」より)(資料2)

資料3 ケース・スタディー「シアトル市立図書館」