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■ 公開質問状
       

2004年9月9日
台東区長 吉住 弘 様 
社団法人 日本建築家協会
会長  小倉 善明

新台東病院基本設計業務の一般競争入札の結果に関する公開質問
 拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
 さて、貴台東区が実施した新台東病院基本設計業務の一般競争入札の結果、8,366円で松田平田設計が落札、これが調査基準価格を下回ったために、調査検討委員会でヒアリングをしたうえで、契約履行に問題はないとして契約をした旨、過日新聞紙上に報道されました。
 このような低価格での応札は、自らの行う業務の価値をおとしめるばかりでなく、結果的には建築設計業務全般の質の低下につながるものであり、社会公共に対して誠実に業務責任を果たすべき建築家の倫理に反するものとして、当会が定める倫理規定で禁じているところであります。しかるに今回報道されたような極端な事例が、当会所属の会員の事務所に関して発生したことは真に遺憾であり、現在、職責委員会でこれに対する対応を検討しているところです。
 ところで、公共調達における著しい安値応札に対処するために、低入札価格調査制度が設けられていますが、調査にあたって、独占禁止法でいう不当廉売に該当するかどうかを判断する場合、その競争入札が公正性と経済性を確保できるよう適切に実施されているかを検討すべきものとされています。(別紙「公正取引委員会」発表文書をご参照下さい)
 今回の基本設計業務に対して貴台東区が想定した予定価格は3,600万円とのことであり、これに対する落札価格は0.02パーセントです。調査検討委員会は、この価格でも契約履行に問題ないとし、契約に至ったとのことですが、この金額で必要な業務を遂行することが不可能なのは火を見るよりも明らかであり、この決定は上記の低入札価格調査制度の趣旨に反するものと思われます。
 本来、公共建築の発注者は、建設に関するコストを負担する納税者に対して、結果に関する説明責任を持ち、美しく、必要とする機能を備えた建築が適切な価格で出来るように配慮すべきであると考えます。この観点からすれば、設計料は単に安ければよいというものではありません。発注者には、設計者に対し設計与件を満たす建築を設計するために当然必要となる時間や、費用などを与える責任があると考えます。その意味で貴台東区の今回のご処置には疑問を感じざるを得ません。
 われわれはこうした問題が発生する根本には、建築設計等の知的生産業務についても物品の購入と同様に入札を原則とする会計法、自治法の制約があるものと考えております。しかし世界的にみて、創造性を必要とする設計業務に携わる建築家や、技術者の選定は設計料の多寡によって決める入札制度ではなく、設計能力の評価によってなされるのが常識になっています。そこで、日本建築家協会ではかねがね入札によらない設計者選定を推進する運動を続けております。また、国土交通省も、設計者の選定には入札は不適切であるとの見解を示しています。
 貴台東区では、なぜ設計者を入札で選ぶのか、また、設計者を入札以外の方法で選定される意思がおありなのかを知りたく思います。
 そこで、以下の2点につき質問させていただきます。よろしくご回答下さるようお願い申し上げます。
敬具
1) 新台東病院の低入札価格に基づく契約に関して発注者責任をどう考えておられるか。

2) 今後の設計者選定に入札以外の選定方法を採用するお考えはあるかどうか。
以上


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