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日本建築家協会賞 
「ぐんま国際アカデミー」
設計者: 宇野 亨 CAn、大同工業大学
  小嶋 一浩 CAt、東京理科大学
  赤松 佳珠子 CAt
ぐんま国際アカデミー外観
ぐんま国際アカデミー内部
宇野 亨
宇野 亨
小嶋 一浩
小嶋 一浩
赤松 佳珠子
赤松 佳珠子
■創造力を喚起する場所
 学校は子供たちの学習の場であり、生活の場でもある。教育プログラムに適合した建築であることは重要だが、子供たちや先生方の創造力を喚起するような、フレキシブルで開放的な生活の場であることが最も大切であると考えている。

■前例のない教育プログラム
  小学校1年生から、英語で授業を行う学校として注目された「ぐんま国際アカデミー」が、2005年の春に開校した。この学校は、構造改革特別区域法の第1号で「英語教育特区」が認定された小中高一貫校(今回は、小中学校のみ)である。国内では、前例のない教育プログラムが特徴で、1)小中高の一貫教育、2)国語、社会以外の科目は英語で授業を行う、3)少人数学習の3つが骨子である。これらの教育プログラムは、特徴であると同時に、複合的な課題でもあった。小・中学校で空間の利用効率を高めるような機能諸室の収差選択。日本語と英語が共存する学習環境。少人数学習を可能にする空間構成など。短い設計期間で、カリキュラムがなく、相談できる先生方もいない状況で、これらの複合的な課題の可能性を引き出せるような、自由度の高い空間を創造することが望まれた。

前提のない設計
 設計期間をコンパクトにするため、設計打ち合わせ・視察には、必ず市長にも同席してもらい、その場で計画案の協議をして、結論を出すようにした。木造平屋の校舎にすることも、私たちが設計した「吉備高原小学校」の視察時に決まったことのひとつだ。また、英語のイマージョン教育を実践している「加藤学園」を視察して、日本語と英語の教室を使い分けることの重要性を示唆された。子供は帰国子女だけが対象ではない。英語のヒアリングの集中力を高めながらも、多様な学習展開ができる空間を目指す。これが、全体としては開放的な英語環境に、閉ざされた日本語環境が点在する空間構成に反映されることになる。また、首都大学東京の上野淳教授、千葉大学の柳沢要助教授に学校計画のアドバイスをお願いし、海外の学校の動向や、実例の勉強会を市長や、学校法人設立準備委員会の方々と行い、広い視野で学校を考えた。設計と平行して行われたこれらの予備調査を反映した模型やスケッチにより、敷地全体の具体的な検討を重ねた。
 文部科学省の設置基準に制約されない学校であることの影響が大きいが、教室の大きさや数、学校の構成要素から検討を始めるような、従来の学校では考えられない前提のない設計をすることになった。

■ハウス/ネイバーフッドによる空間構成
 
この学校は、「ハウス」と「ネイバーフッド」という領域の概念で、普通教室群を構成したオープンプラン型の学校である。前述の柳沢助教授のアドバイスによるもので、北欧の学校事例を参考にした。「ハウス」と「ネイバーフッド」の構成要素や、集合体の単位は学校により異なる。この学校では、1学年3クラスの集合体を「ハウス」、3学年ごとのまとまりを「ネイバーフッド」と呼ぶことにした。
1.ハウス
 小・中学校で「ハウス」の構成要素は異なる。小学校は、1クラスの担任がふたり(日本人/外国人)いて、1学年は3クラスからなる。1学年に先生が6人いることになり、少人数学習をするためには、最低6つの場所が必要になる。従来の一斉授業も行われるため、時間割を想定して、各曜日、時間毎の子供たちのアクティビティを検討しながら、教室の大きさ、数を決めていった。各クラスの拠点を兼ねたクラスベース(CB)という床座の小さな空間と、遮音性能(オープン/クローズド)の異なるふたつの教室、簡単な理科の実験や、美術のできる水場のあるアート&サイエンスという性格の異なる空間により、小学校のハウスは構成される。
 これに対して、中学校のハウスは、オープン、クローズド、セミクローズドという段階的な遮音性能の教室と、ロッカースペース、これらを結ぶFLA(Flexible Learning Area)で構成される。小中学校ともに、各ハウスにひとつクワイエットルームと、敷地内のストリートに面した昇降口がある。
2.ネイバーフッド
 小・中学校を、成長過程に応じた3つの集合体に再構成して、それぞれの関連諸室との関係性を考慮した配置計画にしている。生活環境を重視した低学年ネイバーフッド(小学校1−3年生)には、簡単な運動や発表会のできるプレイルームという小さな体育館を近くに配置した。現在は、学童保育の場としても活用されている。徐々に専門課程の科目が重要になる中学年ネイバーフッド(小学校4−6年生)は、メディアセンターの近傍に配置し、高学年ネイバーフッド(中学校1−3年生)は、特別教室やメディアセンターとループするような配置で、教科教室型に近い学習環境の形成も可能である。各ネイバーフッドは、3つのハウスをL型に配列して、コーナーに職員室を置くことで、子供と先生の距離が近い環境をつくりだしている。将来的には、3学年ごとの複数学年制や、全学年の無学年制への移行、各ネイバーフッドを独立性の高い3つの学校として再編することも視野に入れた計画である。

■内外が連続した快適な生活の場
 
学校に限らず、建築にとって快適な生活の場であることが重要である。接地性の高い木造平屋で、ストリートや中庭、テラスのような外の活動領域が近接することで、内外が連続した活動領域を実現している。凹凸の多い平面形状により、建築の表面積を増やして、採光・換気に配慮している。また、屋根面のトップライトやハイサイドライトが、奥行きの深い内部を自然光で満たし、夏季の排熱用の換気窓としても有効に働く。冬季は、「吉備高原小学校」でも採用した床下温風方式の暖房により、学校全体が中間期程度の室内環境になる。冷房は限られた部屋にしかないため、井戸水を利用した屋根散水により、屋根面の輻射熱を低減している。オープンプラン型の学校において、音環境は重要である。ここでは、東京大学生産技術研究所応用音響工学研究室のアドバイスにより、天井全体を吸音面として計画した。特に、アリーナとメディアセンター、プレイルームと音楽室など静と動のアクティビティが向き合う空間については、遮音性能を高めた。

■街を再構成する学校
 
敷地全体がヒエラルキーのない活動領域であることは重要である。ハウス以外の空間が、特別な場所や閉ざされた場所にならないようにする。空間の使われ方をある程度ルーズにして、敷地全体で多様な学習の可能性を引き出す。そのような場面での違和感を無くすために、特別教室群やメディアセンター、管理棟もハウスと同じ架構にして、小さな空間の連鎖で全体をつくる。結果として、敷地全体に繰り返し現れるコンクリートの門型フレーム、屋根から突出するトップライトが大きな建築を細分化し、この学校が周辺環境と連続した生活の場であることを強調する。 また、この学校にはプールやアリーナの固定ステージがない。周辺から孤立した学校ではなく、地域や既存施設との連携を積極的に考えた結果だ。別敷地に計画予定の高校も含めて、ひとつの場所で完結しない建築が街を再構成していく可能性を感じている。(宇野 享/CAn)



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