JIA環境建築賞

第15回環境建築賞 総評

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 2015年11月、COP21パリ会議では、各国の事情に応じた温暖化ガスの削減目標が決められた。地球規模の環境負荷削減について国際的な合意ができた画期的なできごととして記憶されるであろう。JIAが他の建築関連4団体とともに、「地球環境・建築憲章」を制定されたのは2000年。その後、環境負荷の小さい建築の評価に関わるさまざまな基準や制度が整備されてきた。スマートシティやZEB,ZEHに見られるような省エネルギー技術・創エネルギー技術の高度化・高効率化には目を瞠るものがある。その一方で、これらのテクノロジーと親自然的なライフスタイルをどのようにバランスさせるのか、建築の新たな課題として浮上してきたようにも思われる。3.11の教訓の一つは、高度なエネルギー技術への過度の依存が、皮肉にも自然との遮断を強めてしまうという懸念でもあった。
 環境負荷削減のもう一つの軸である物質資源の循環についても、技術革新が著しく進み、木材の地産地消が建築の地域性の課題としても定着してきた。
 このような状況の中で、人間と自然との関係の再構築は、JIAが掲げる新しい環境建築の大きな特徴になってきたように思われる。新しい自然観や身体感覚に基づいた建築が求められてきたのである。
 JIA環境建築賞では、近未来の持続可能な社会の創造にむけて、「社会ストック」「都市・地域の活性化」「居住環境」にわたる幅広い提案を求めてきた。気候風土、文化、資源、経済に即した地域との共生が求められてきた。
 第16回となった2015年の応募は、住宅部門が19点、一般建築部門が33点であった。応募にあたって「環境データシート」の提出が求められるが、その内容が充実してきたのも近年の特徴である。この独自の環境建築評価システムの構築もJIA活動の大きな成果だ。審査の準備段階で、「JIA環境建築賞タスクフォース」がこのデータを読み解く。その定量的な分析結果は、総合的な評価判断の必要条件ではあっても十分条件ではないが、審査の欠かせないプロセスとして定着してきた。
 第1次審査で一般建築部門7点、住宅部門5点を選出した。第2の審査段階は、建築家と技術家とのペアで構成されるチームによる現地審査が行われた。現地を訪れてわかることが多いのも、環境建築ならではのこと。地域に溶け込んで活躍する建築家の熱意も伝わる。その報告会を経て、11月28日に公開審査会が開かれた。最初に、設計者がプレゼンテーションを行い、その後に、審査員が議論をしながら受賞作品を決めていくやり方である。審査員が現地で考え、また感じたことを設計者当人の前で確認しつつ、委員が相互に議論を行いながら賞の選定を行う。公開審査を経てあらためて感じることは、環境建築の評価の文脈の多様さである。公開審査の意義は、多様な評価の在り方そのものを議論することにもあると思えるからである。
 一般建築部門では、均質で安定した室内気候を効率的に制御する要求が強いため、設備技術システムの高効率化・洗練に向かう方向になりがちであるが、オフイス空間における知的生産性の向上のためには、自然の変動が感じられた方がよいとの見方もある。これは、一つのジレンマであり、これをどのように解くかが設計上のキーポイントとなる。もちろん、地域の気候によって、また、建築の用途によって解き方も異なる。
 最優秀賞となった「沖縄県看護研修センター」は、断熱材を用いずに徹底した遮熱を行うとともに、半外部空間を大規模に組み込んだ入れ子の構造が特徴である。沖縄の気候風土における新しいプロトタイプの提案として評価された。「木籠のオフイス」は、日射遮蔽と自然採光を考えた地元産材の木材によるルーバーの構成が魅力的であった。「東京スクエアガーデン」は、都市スケールで構想された外部の空間構成と地域コミュニティへの配慮が出色であった。
 住宅部門で最優秀賞となった「[[[cell]]]」は、都心部住宅地の狭小な敷地でありながら、積極的に外界との接点を設け、光や熱、風の変化を考えたのびやかな空間構成ときめこまやかな設備システムが評価された。優秀賞の「九十九里の家」は、伝統的な集落が残る農村部のゆったりした環境に溶け込み、地域のライフスタイルにふさわしい開放的な空間構成が評価された。「白馬の山荘」は、山荘であることを徹底的に生かした大胆な空間構成を試み、ブリコラージュ的な居住者によるつくりこみをした点が評価された。
 他の入賞作品も含め、環境建築はますます深みをまし、多様な展開を示すようになってきたと思う。その意味を個々の講評からも読み取っていただけると幸いである。

審査委員長 小玉 祐一郎