JIA 25年賞・JIA 25年建築

JIA25年賞受賞作品 登録No.227

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釧路フィッシャーマンズワーフMOO

釧路フィッシャーマンズワーフMOO
竣工時 
釧路フィッシャーマンズワーフMOO
現況 ©釧路観光コンベンション協会
 
設計者: 日建設計(北海道日建設計)・毛綱毅曠建築事務所共同企業体(新築時)
北海道日建設計(リニューアル・維持保全)
建築主: 釧路市
施工者: フジタ工業・鹿島・戸田・村井・亀山共同企業体
竣工年: 1989年7月
所在地: 北海道釧路市
講評:

 釧路フィッシャーマンズワーフMOOは、北海道の釧路にある商業と事務所、スポーツなどの複合施設である。釧路川の河畔にあるランドマークとして、商業と観光、地域の拠点になっている。近年では、国内だけでなく海運による外国人観光客も増えているという。
 この建築は、バブル経済期の民活法(民間事業者の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時栃措置法)の適応第一号であり、日本のウォーターフロント開発の嚆矢となっている。その後は厳しい運営を強いられることもあったが、所有者が釧路河畔開発公社から釧路市へと変更されることにより、経済状況の急激な変化に対応してきた。2011年の東日本大震災では被災したが、復旧工事に加えて災害対策工事も行い、将来の災害時の避難施設とすることができるようになっている。このように、社会の変化に対して、建築家と所有者や運営者が一体となって保全改修を行ってきたことは、25年賞として大きく評価できる。
 設計は異才の建築家といわれた毛綱毅曠と北海道日建設計との協働で、まさに感性と技術が融合した建築である。短い設計工事期間にもかかわらず、寒冷地にする外断断熱や湾岸環境の塩害対策がとられ、その後の保全工事も定期的に行われているため、外部はほほ竣工時のそのままの状態を維持している。かたちの手がかりとしては、釧路周辺にある様々なものが参照されている。外観は海の町並が、内観では3つの丘と坂道と吹き抜けという釧路の都市構造がイメージされている。このように、「かたちのイメージ=アイコン」を個人的な感性によって構成するポストモダンの手法によって、近代建築のような無機質で単一的からの脱却が目指されている。
 ポストモダンの建築は、ザハやゲーリー、カラトラバなどの建築家により海外では今も継続している。しかし、現代の日本の建築界では20世紀に終わったとされている。ポストモダン建築の特徴であるかたちのイメージ=アイコンは、大衆にわかりやすく強い印象を与えることができる。一方で、表層的ですぐに消費されてしまう。そう思っていたわたしが現地を訪れて最も驚いたのは、この建築が地域の人々に愛されていたということだった。釧路フィッシャーマンズワーフMOOは、毛綱毅曠という個人の記憶からつくられ、30年が経過した今に釧路という街の記録となっていた。久しぶりにポストモダン建築への興味が沸いてきた。

  (福島 加津也)