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JIA25年賞

第14回 日本建築家協会25年賞 (2014年度)

※ 写真・文章等の転載はご遠慮ください。


 
相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら
設計者: 株式会社 環境デザイン研究所
仙田 満
建築主: 相模原市
施工者: 〈竣工時〉相陽建設株式会社
〈改修時〉古木建設株式会社
竣工年: 1987年8月(竣工)
2013年12月(改修)
所在地: 神奈川県相模原市
講 評: 昭和62年に開館した市立の水族館。閑静な住宅に囲まれた公園のような立地は、東面に連なる河岸段丘の斜面緑地が心地よいスケール感を作り出している。この水族館は相模川に生育する淡水魚たちを源流の富士五湖から相模湾までの114kmに渡り生態域ごとに類型に分けて展示したもので、河川という生態系の成り立ちをその形のとおりに理解させてくれる空間構成をなしている。当時には珍しく自然光を入れ外構の植栽を借景に取り入れた水槽は、地域の人たちなかでも子供たちの体験学習の場として親しまれる施設になっていて、設計者の意図通り「子供が走り回れる」施設であり続けていることがうれしい。年間12万人と言う思いがけないほど多数の入場者のある地域施設は、合併で広がった相模原市にとって貴重な存在であろう。案内の職員の方は旧藤野町の職員だったそうだ。相模川と同じように、この施設は地域を結びつけ文化を次の世代につなぐ役割を果たしている。
  (審査委員:黒木 正郎)
   
相模川ふれあい科学館竣工時
竣工時  撮影:藤塚光政

相模川ふれあい科学館現在
現在  
 
京王プラザホテル 本館
設計者: 株式会社 日本設計
武藤研究室
鹿島建設株式会社設計部
建築主: 京王電鉄株式会社
施工者: 鹿島建設株式会社
竣工年: 1971年5月
所在地: 東京都新宿区
講 評: 1971年竣工の新宿副都心初の超高層であり日本初の超高層ホテルである。薄くシャープな外観と彫りのあるPCパネルで新宿副都心に屹立する姿は日本における美しい超高層ビルの可能性を示していた。現在まで多くの数の超高層ビルが出現しているが、未だ色褪せないデザインを維持し続けている。現在のホテルは設備の進歩により定期的に新陳代謝が求められているが、京王プラザホテルではセンターコアで奥行きが浅く広い間口の客室の空間構成の設計により客室面積の拡大や設備の更新に柔軟に対応できていることは特筆される。ただ、内装に関しては当初のジャパニーズモダンデザインが一部変更されたことは惜しまれる。新宿副都心の都市スケールの区画割りの中で、敷地の周囲に高低差を利用した自然で豊かな植栽とランドスケープが建築と一体化してヒューマンスケールの空間を訪れる人々に与え続けてきていることは、改めて当時の設計チームの時代を超えた確かな力量を示している。
  (審査委員:堀越 英嗣)
   
京王プラザホテル竣工時
竣工時  撮影:川澄・小林研二写真事務所

京王プラザホテル現在
現在  撮影:川澄・小林研二写真事務所
 
東京ドーム
設計者: 株式会社 日建設計
平井 堯(元社員)
亀井 忠夫
株式会社 竹中工務店
村松 映一(元社員)
平田 哲(元社員)
建築主: 株式会社 東京ドーム
施工者: 株式会社 竹中工務店
竣工年: 1988年3月
所在地: 東京都文京区
講 評: 我が国で初めての屋根付き野球場として1988年3月に竣工した東京ドームはランドマークとして一般の人々に広く認知されている。空気膜を維持管理するAIシステム、防災システム、雨水貯蓄システム、大型集客の居住域における空調方式とコントロール管理など、設計された時代を象徴し、今日性のある技術が保持されている。これは東京ドームばかりでなく東京ドームシティという街を常に美しく保ち、訪問客が心地よく過ごせるように、建築主、設計者、施工者が万全の維持保全体制を確立し、定期的な施設改善委員会を設置し情報共有を図りながら取り組んでいるからであろう。また、近隣駅からのアクセスの利便性を考慮しながら、ドーム竣工後の周辺施設の計画においても、小石川後楽園と連続した都市計画公園として位置づけられた周辺一帯が積極的な緑化や修景施設が整備され、都市環境の向上が図られてきたことも評価に値することである。
  (審査委員:山名 善之)
   
東京ドーム竣工時
竣工時  撮影:わたなべスタジオ

東京ドーム現在
現在  撮影:東京ドーム
 
小石川の住宅(「私たちの家」改修)
設計者: 原設計:林昌二・林雅子
改修設計:安田幸一
建築主: 安田幸一
施工者: <竣工時>:白石建設
<改修時>:栄建社
竣工年: 1955年<Ⅰ期>
1978年<Ⅱ期>
2013年8月<改修>
所在地: 東京都文京区
講 評: 林昌二氏のスピリットを受け継ぐ安田幸一氏が改修を行い引き継いだ住宅作品のリビングヘリテージとしての好例である。林昌二・林雅子の自邸「私たちの家」は、55年のⅠ期工事以降、改修を繰り返し、78年には大規模な増築を行い現在の姿となった。ウィークデイと週末での生活をきちんと切り替えられる様々な平面、断面上の工夫や、可動式ディテールに溢れており、安田氏による改修でも重要な部分はすべて保存されている。
  (審査委員:山名 善之)
   
小石川の住宅竣工時
竣工時<Ⅰ期>撮影:不明

小石川の住宅現在
現在  
 
三井住友海上 駿河台ビル
設計者: 株式会社 日建設計
<原設計>小倉 善明(元社員)
<改修設計>茅野 秀真
<改修設計>白井 大之
日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社
<改修設計>杉山 功
建築主: 三井住友海上火災保険株式会社
施工者: 鹿島建設株式会社
三井住友建設株式会社(元 三井建設(株))
竣工年: 1984年4月
所在地: 東京都千代田区
講 評: 同建物は合併等によりその主体は変遷しているが、常に本社ビルとしての機能を保たれており、またそのポジションにふさわしい都市景観を維持している。かつ地域貢献を含んだ敷地周辺との関係を長期にわたって構築している。2008年には道路を挟んで北側に新館を建設し、都市再生特区の認定を一体として受けた。また前面道路地下に公共交通へ通じる経路を引き込み、以前の前庭を継承しつつ新しい都市機能を増設している。それらの増床と都市機能の追加配置によって、同ビル創建当初からの大開口のピロティと清水久兵衛作の鮮烈な抽象彫刻との組み合わせの迫力は保たれ、築30年を過ぎても褪せていない。また低層部屋上に設けられた庭園は当初より整備されていたが、2013年に一般開放されたと同時に地域の生態系と多様性に配慮した緑地管理を新設徹底し、今では小さな森が現代建築の上に展開されている。その様子は圧巻である。新旧のアイデアによって、本社ビルが果たすべき姿をなお主導している。
  (審査委員:中谷 礼仁)
   
三井住友海上 駿河台ビル竣工時
竣工時  撮影:村井修

三井住友海上 駿河台ビル現在
現在  
 
三輪そうめん山本本社
設計者: 株式会社 竹中工務店
建築主: 株式会社 三輪そうめん山本
施工者: 株式会社 竹中工務店
竣工年: 1983年4月
所在地: 奈良県桜井市
講 評: 300年の歴史を持つ三輪そうめん本社はその発祥の地である三輪山を間近に望む箸墓古墳に面して1980年に竣工している。施主の条件はその日本の古代史の原風景的景観に対して目立たぬようにそして訪れる人々が寄りつきやすく親しみやすい建築とすることであった。35年経った現在、東大寺修復後の残材が使われた瓦による三輪山と勾配を合わせた寄棟の屋根と成長した樹木とともに、遥か昔から存在し続けているような姿で佇んでいた。内部の構成は、一部小さな食堂と体験施設に変更されているがほぼ当初の状態を維持している。当初から次代を見据えて綿密に計画され、時代におもねること無く継承されている老舗の伝統というべき持続力である。歴史的原型的景観と食という根源的仕事の営みに呼応する瓦の寄棟のおおらかな屋根の連続する形態は、時代を超えて風景と一体化するために敢えて平凡に留まることの持つ建築の本質的意味を静かに示しているといえる。
  (審査委員:堀越 英嗣)
   
三輪そうめん山本竣工時
竣工時  撮影:竹中工務店

三輪そうめん山本現在
現在  撮影:古川泰造
 
町田市立国際版画美術館
設計者: 大宇根建築設計事務所
大宇根 弘司
建築主: 町田市
施工者: 大成建設・小田急建設・高尾建設共同企業体
竣工年: 1986年8月
所在地: 東京都町田市
講 評: 版画専門の市立美術館として、国内において独自の位置を占める。美術館機能のみならず公に開かれた各種版画工房や市民展示室も設けられている。奥行きがある芹が谷公園内のエントランスに立地し、逆に幅に余裕のない制約を、各機能を雁行配置によって配した空間計画で巧みに処理している。中心の玄関ホールから配されたゾーニングは明快である。竣工時点で将来を見据えたバックヤードの確保など、竣工当初より大幅な改変なく、その機能が現在でも発揮されていることは特筆に値する。同美術館の以上の持続性は設計者による各機能、あるいは建造物のあり方への深い配慮が感じられる。美術館としての格とともに、使いやすさをより考慮した展示室や工房の割り切りのよい仕様。外壁断熱を採用し、あえて選択した炻器質レンガの外壁と銅板の屋根や開口廻りの寿命の長い堅実なデティールは、むしろ時代的古さを感じさせない。地域の特色ある美術館の根づき方の最上の事例の一つと考えられる。
  (審査委員:中谷 礼仁)
   
町田市立国際版画美術館竣工時
竣工時  撮影:増田彰久

町田市立国際版画美術館現在
現在  撮影:増田彰久
 
稲沢市荻須記念美術館
設計者: 徳岡 昌克
建築主: 稲沢市
施工者: 三井住友建設株式会社
竣工年: 1983年6月
所在地: 愛知県稲沢市
講 評: 対称形で大屋根を持つ構成にありがちな剛毅な構造物を想像して訪れると、木立の中に佇む北入りの深い軒がエントランスに導く明るい陰影を作り出していて、その印象だけでもこの美術館が31年間にわたり単なる公共施設に終わることなく市民から愛され続ける理由を納得させられる。荻須画伯のコレクションを少しずつ増やしては再訪者の期待に応え、またパリのアトリエを復元した空間を見せて、美術館の機能は作品の展示に限るものではないことを理解させる。館が主催する美術講座は、一講座終わるたびに受講者が新しいグループを作っては活動を続けるので、今では20以上のグループがあり、展覧会も開催しているという。これらの活動を切り盛りし、館の運営から後継者の育成までこなす女性の館長は、開館時に学芸員として新卒採用された方なのだそうだ。この美術館が公開コンペで選ばれたことを思うと「選ぶ」と言う行為の価値と責任の重さに思いをはせざるを得ない。
  (審査委員:黒木 正郎)
   
稲沢市荻須記念美術館竣工時
竣工時  撮影:村井修

稲沢市荻須記念美術館現在
現在  撮影:村井修
 
東京サレジオ学園
設計者: 株式会社 坂倉建築研究所
建築主: 社会福祉法人 東京サレジオ学園
施工者: 日本国土開発株式会社横浜支店(第1期工事)
戸田建設株式会社東京支店(第2,3期工事)
竣工年: 1986年3月<第1期>
1987年<第2期>
1988年9月<第3期>
所在地: 東京都小平市
講 評: 本建物は1986年3月から1988年9月にかけて3期に分けて竣工した坂倉建築研究所設計による児童養護施設である。現在も約2歳から18歳までの男子児童100名あまりが職員と生活している。中央のマウンドのある芝生の広場を中心に8つの園舎、管理棟、聖堂、小聖堂、地域交流ホームが有機的に配置され、周囲を武蔵野の雑木林に取り囲まれている。この建築と周囲の環境が、親と別れ家を離れた子どもたちにとってのわが家となり、子どもたちの記憶の原風景となっている。築25年以上を経た現在においても、当初の建築に込められた建築家の思想が生きづいており、建物自体も美しく保たれ、さらには当初の植栽が武蔵野の雑木林と一体となり、優れた住環境と景観を形成しており、また、所有者、設計者、施工者の連携が良好に保たれ、過去の保全・改修の記録も残され、将来的な計画についても検討が始まっており、総合的に見て、JIA25年賞にふさわしい建築と評価できる。
  (審査委員:田村 誠邦)
   
東京サレジオ学園竣工時
竣工時  撮影:北田英治

東京サレジオ学園現在
現在  撮影:北田英治
 
調布市総合体育館
設計者: 久米設計(元 久米建築事務所)
(基本計画:石黒哲郎芝浦工大名誉教授)
建築主: 調布市
施工者: 鹿島建設・林建設共同体
竣工年: 1985年10月
所在地: 東京都調布市
講 評: 本建物は1985年10月に竣工した久米建築事務所設計の調布市立の総合体育館である。東京都の都市計画公園内という敷地条件から建ぺい率や高さの制約があり、これを解決するため建物の大半を半地下に埋める設計となっている。半地下の大体育室の屋上は植栽され、工事により生じた残土によるマウンドと一体化され、外観的には体育館というより起伏のある公園となり、隣接する神代植物公園とともに市民の憩いの場となっている。また、地中埋設化による暖房負荷の低減、自然採光、自然通風、熱源機器の排熱利用等、当時は先駆的なパッシブソーラーのシステムを取り入れている。竣工後28年を経過する中で、日常の清掃や補修等は管理者側で、大規模な改修は久米設計が関わり、建物も良好に保たれている。市民の利用も多く、地域に親しまれた建築であり、その先駆的な設計理念が現在に生きている点など、総合的に見て、JIA25年賞にふさわしい建築と評価できる。
  (審査委員:田村 誠邦)
   
調布市総合体育館竣工時
竣工時  撮影:松岡満男©新建築

調布市総合体育館現在
現在  
 
新潟県民会館
設計者: 株式会社佐藤総合計画(元 株式会社佐藤武夫設計事務所)
建築主: 新潟県
施工者: 株式会社福田組
竣工年: 1967年11月
所在地: 新潟県新潟市
講 評: この建物は昭和39年の新潟地震からの復興事業として建設された1700席あまりの大ホールを擁する文化施設である。立地する白山公園は明治6年に日本で初めて設置された近代公園のひとつで、園内には体育施設などのほか市の文化センターも設置されており、公園であると同時に公共施設群の集中立地区域の感が強い。自由な造型を競うそれらの施設群の中にあって軒の水平線が屹然と空を区画するこの県民会館は、設計者佐藤武夫の意図通り公園全体の軸性とスケール感にある秩序をもたらしている。建築から半世紀近くを経て耐震改修もなされた建物であるが、外観も内部空間も昭和40年代の理念を体現したそのままであり、明快な軸線と無駄の無い空間構成は、最小の要素で最大の効用を得るために必要なのは人と建築空間が相互に意思疎通できる仕組みであると教えてくれている。建築物は、人々に時代の理念を伝え続けるべき役割を負っていることを肌で感じる作品である。
  (審査委員:黒木 正郎)
   
新潟県民会館竣工時
竣工時  撮影:大橋富夫

新潟県民会館現在
現在  撮影:和田庄平
 
島根県立図書館
設計者: 菊竹清訓建築設計事務所
(耐震改修:菊竹清訓建築設計事務所+島根県総務部営繕課)
建築主: 島根県
施工者: 株式会社竹中工務店
(耐震改修:山陰クボタ水道用材株式会社)
竣工年: 1968年10月
所在地: 島根県松江市
講 評: 本建物は1968年10月に竣工した菊竹清訓建築設計事務所設計の建物である。コンクリート打放しの壁、ガラスや鉄骨で構成された切妻屋根を思わせるエントランス、大屋根のかけられたロビーなど、ダイナミズムと素材感を併せ持つ戦後モダニズムを代表する建築であり、現在も松江市の中心部を象徴する建物として市民に親しまれている。松江城の堀に面した雁行した外観や、堀に面した学習室からの景観も秀逸である。また、ボイドスラブは当時の革新的な技術が導入され、現在も有効に機能している。平成25年の耐震補強工事や外装補修など適宜メンテナンスが行われており、現在においても建設当初の建築の美しさが保たれ、主な改修工事の記録も適切に残されている。このように、本建物は建築に込められた建築家の思想が現在も息づき、良好にメンテナンスされ、地域に愛され周辺地域に貢献し続けている点で、JIA25年賞にふさわしい建築と評価できる。
  (審査委員:田村 誠邦)
   
島根県立図書館竣工時
竣工時  撮影:彰国社

島根県立図書館現在
現在  撮影:島根県
 
加藤学園暁秀初等学校
設計者: 槇総合計画事務所
建築主: 学校法人加藤学園
施工者: <竣工時>鉄建建設
<改修時>株式会社竹中工務店
竣工年: 1972年10月
所在地: 静岡県沼津市
講 評: オープンスペース教育の最先端の現場である加藤学園初等学校は、日本において約3000以上に一般化したオープンスペースの教室をもった学校をつくるきっかけとなった、歴史的、文化的に重要なモニュメントである。加藤理事長の掲げる「かべの無い学校」に、設計者の槇文彦氏は中央の多目的ホールを囲むように16m角の教室を配す建築計画・設計において応えた。音楽室前の楽器やトイレに駆け込む子どものシルエットなど、具体的でユニークなスーパーグラフィックや色彩等は、室内の自然光の美しさ、子供スケールの実現と共に、学校空間の可能性を生き生きと示し続けている。現在まで、耐震改修や設備の改修などが行われているが、法人本部にはそれらの改修履歴、メンテナンス履歴が保管されており、その意匠性、空間を損なうことなく建築の基本的思想と空間が40年以上に渡って維持されている。卒業生が自分の子どもを加藤学園に入学させるなど、世代を超えた教育方針と学校建築への理解があることも付け加えておきたい。
  (審査委員:山名 善之)
   
加藤学園暁秀初等学校竣工時
竣工時  撮影:槇総合計画事務所

加藤学園暁秀初等学校現在
現在  
 

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