支部からのお知らせ

  • 投稿:2008年8月1日
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【連載】和のこころ

もてなすということ
2008夏 和のこころ(顔写真)
執筆者:坂田宗大氏
(裏千家淡交会 大阪北支部常任幹事)
最近、テレビなどでよく、おもてなしという言葉をよく耳にする。
お茶を教えている立場から考えてみたいと思います。
私の家は祖母から父、母とそして私とお茶を教えることを家業としている。祖母の時代ならば花嫁修業ということでほとんどと言っていいくらいの女性がかじった程度は経験しているではないでしょうか。
しかし、最近私の所へ入門してくる若い方には花嫁修業という感覚の人は少ない。
点前、作法だけでなく広く日本の伝統文化である茶道を学ぼうという気持ちのある人が多い。稽古を習いに来る人の目的は様々で、普段の生活(仕事、育児等)のストレス発散、年配者はぼけ防止とか、中には茶道を極めようと志す人もいます。理由は様々ありますが、本来、お茶は、何の為に習うかといえば第一は人をもてなすというところにあると思います。


もてなすと言っても色々な方法があり、大寄せと言って一日に何百人も招く茶会もあれば、正式な茶事と呼ばれるものは3人ぐらいの客で4時間程かけてするものまである。また、普段の来客でもちょっとしたお茶ごころがあるだけで来られた方も印象が違うと思います。
ではお茶会の中では、亭主(呼ぶ側)はどういう所に気を付けているかと申しますと、茶会はまず季節感を大事にします。それもクーラーや暖房器具頼らないで、道具等によって演出します。
例えば、夏は掛物に水に関係するものを使ったり、茶碗などは浅いものを使いますし、他の道具でも塗りものよりも木地のものをつかいます。お菓子を冷たいものにしてみたりします。茶室も夏は襖から御簾に変えたりします。逆に冬は暖かさを出すために、深い茶碗などを使います。茶室も火鉢等で客が来る前から暖めておきます。
利休の言葉ですが「夏は涼しく、冬は暖かく」と言っています。簡単なようでこれだけのことを文明の力をできるだけ頼らないでするのがけっこう難しい物です。
また、茶会にはテーマ(趣向)を設定します。
例えば、一月ならばめでたい正月の趣向にするとか、あとは五節句、難しいものでなくとも自分の誕生日でもいい。それを演出するのが道具に付いている銘というものです。
この銘がお茶の特徴最も表しているもで、お茶が日本を代表する伝統文化であるといわれる一番の理由だと思います。銘とは単にそのものの呼び名ではなく、故事、地名(有馬山、磐余野)、古典文学(源氏物語、伊勢物語等)、また季節の銘(初霜、早苗、ほととぎす等)などがあります。
これらはすべて平安時代の和歌の心からきています。そういう昔に茶人によってつけられた銘の付いた道具を趣向や季節によって使いわけ、その心を客はくみ取らなければなりません。
最近の茶会は亭主と客の会話は非常にマニュアル化していて、亭主はただ季節の道具を並べているだけで趣向がない場合が多いし、客もただ出ている道具を順番に聞くだけという茶会が多いように思う。それでは極端にいえば喫茶店と変わらない。
そこに一つでも文学性があれば非常にレベルの高いものになる。それがお茶のこころであると思う。
ですから、お茶の稽古は点前以外の方が学ぶ事がたくさんある。先程の文学全般はもちろん、茶道具については陶器、漆器、竹芸などの工芸関係など、書も読めないといけない。難しですがやりがいはありますし、知れることの喜びは非常に大きい。江戸時代、お茶が男性のたしなみであった時代には教養がある人がお茶をした訳で今の時代とは逆であるが、それでもいいと思う。
京都では国際交流センターで外国人にも教えている。最近は特に韓国、台湾、中国などの留学生が多い。彼らに茶道を学ぼうと思ったきっかけを聞くと、誰もが日本の文化を学ぼうとしたときに代表するのが茶道であるからと答えます。
日本人より日本文化に興味があり造詣が深いように感じる。授業ではまず席入の仕方、床の間の拝見の仕方を教えます。
外国人がはじめて入る茶室という空間が最も日本文化の特徴をあらわしていると思うからです。最近の日本の住宅では床の間ある家も減り、畳のある家すら珍しいこの頃ですが、私の恩師である故古賀健蔵先生が著書の中で拝見について書いている。「日本には拝見ということばがあります。
ところが、外国には見るはありますが、拝して見せて頂くなんてことばも概念もありません。
たとえば、日本人は茶室や客間に入ると、床の間の書画に一礼するわけです。これは、そこにはいないけれど、書画を描いた人の人格に頭を下げて尊崇の気持ちを表しています。尊崇の気持ちがあるからこそ、座って、下から見上げる。これが拝見ということです。つまり、人格というものを尊重する。これが茶の東洋的な心ばえなのです。
一方、西欧では、絵画と人は対等です。立ったまま見ます。そこには作品と見る人がいるだけで、描いた人物、人格を尊重するという思いはない訳です。
拝見というのは、日本文化の特質です」(「お茶のあるくらし」JULIAN)私ここでは特に外国人に対してお茶の作法だけではなく、日本の総合芸術として伝えていきたいと思っています。また、日本人には、昨今の食品偽装にみられようなうわべのもてなしではなく、日本人が茶道の中で400年以上培ってきた知恵と工夫を忘れずに本当のもてなしを忘れず後世に伝えていって欲しいと思います。

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