JIA 25年賞・JIA 25年建築
JIA25年賞受賞作品 登録No.189
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大倉山ハイム3号棟~8号棟住宅
竣工時 |
現況 撮影:雁光舎 野田東徳 |
設計者: | 株式会社 日建ハウジングシステム |
建築主: | 住友商事 大倉山ハイム3号棟~8号棟住宅管理組合 |
施工者: | 鹿島建設株式会社 |
竣工年: | 1979年3月 |
所在地: | 神奈川県横浜市 |
講評: | 大倉山ハイム(3号棟~8号棟住宅)は、東横線大倉山駅から徒歩10分あまりに位置し、9~10階建ての6棟の住棟から構成される住戸数637戸の団地である。緑豊かなオープンスペースをもち、40年近くの時を経た今でも、建物の維持管理状況もそのデザイン性も全く古さを感じさせず、むしろ時を経た中での優美さを湛えている。豊かに育った緑化空間は地域に開放され、居住者のみならず地域の人々にも愛着を持たれ、地域価値の向上に寄与しているものと評価できる。スケルトン・インフィルの分離、共用部からメンテナンスできる設備コアの設置といった建物の耐久性と更新性に対する配慮、2戸1階段とスキップ廊下型の住棟形式による南北両面バルコニー等の住戸プラン上の先見的な工夫に加え、長期修繕計画と時代の変化に対応した改修工事の着実な実施、それらを支える管理組合・建物管理会社・設計者相互の信頼関係等により、築後40年近くを経てなお、居住者に安心と快適な生活を提供し続けていることが伺える。これらの努力の結果として、分譲時の1.8倍以上の中古流通価格を維持しており、長期的な価値向上を実現した民間集合住宅の一つのモデルといえよう。 |
(田村 誠邦) | |
超高層マンションの乱立する時代であり、一方で、同潤会アパートや晴海高層アパートなど、都市の街角を形づくって来た歴史的な集合住宅が姿を次々に消している現代にあって、戦後の集合住宅の実践として、これほど良質で健全に維持されたものが東京にあったのか、との思いを強くした建築だ。一際印象に残ったのは、竣工から40年間、住民たちがこの集合住宅を、愛情を持って守り育ててきたことが、活き活きとした現状から素直に感じ取れたことである。そして、そこには、明らかに、この建築に注ぎ込まれた設計の方法が、確かな理論と将来への見通し、それまでの集合住宅の実践から学んだものに支えられていたからに違いない。中央設備コアの取り方、2住戸1階段とスキップ廊下型の住戸構成によって生み出された両面採光階の平面計画の伸びやかさと廊下階の床レベル差によるプライバシーの確保、そして、秀逸なディテールによって生み出された住棟南面の連続するバルコニーによる水平線を強調した洗練されたファサードの透明感、地域にも開かれた中央庭園に至るまで、あらゆるデザインに正攻法の誠実な姿勢が読み取れる。現代に見直されるべき集合住宅の先駆的事例である。 |
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(松隈 洋) |