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国際建築家連合

建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定
(UIA Accord on Recommended International Standards of Professionalism in Architectural Practice)

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第1版 第20回UIA総会採択、1996年7月7日スペイン、バルセロナ
条文 第86回UIA理事会承認、1997年1月17から19日インド、シャンディガール
ドラフティングパネル改訂、1997年5月29日、再改訂、1997年8月、1998年4月
改訂 1998年12月10〜12日
第2版
目     次
建築実務におけるプロフェッショナリズムの 国際推奨基準に関するUIA協定
 ■ プロフェッショナリズムの原則
 ■ 施策事項
   建築の業務
   建築家
   建築家の基本要件
   教育
   認定/認可/承認
   実務経験/訓練/インターン制
   専門的知識と能力の証明
   登録/免許/証明
   発注
   倫理及び行動
   職能の継続開発
   業務の範囲
   業務の形態
   受入国での実務
   知的所有権/著作権
   職能団体の役割
付属A
   注:ガイドライン文書は協定の次の施策事項について用意された。
認定/認可/承認
実務経験/訓練/インターン制
専門的知識と能力の証明
登録/免許/証明
発注−能力を基にした選定(QBS)
倫理及び行動
職能の継続開発





1993〜1996年の3年間にわたり行なわれたUIA職能実務委員会の25ヶ月にわたる集中的な論議の後UIA理事会は、「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定案に関する決議」を満場一致で推薦し、UIA総会はをこれを採択した(決議の全文は付属Aを参照のこと)。
これにより、UIA総会は、UIA及びUIA職能実務委員会(PPC委員会)での作業の指針となる施策として、協定条文を制定する。その協定はUIAの全ての各国支部に配布され、これら支部の協力と参加を得て、1999年に中国の北京で開催される第21回UIA総会での発表に向け、条文のさらなる整備を行う。そして、建築家のためのプロフェッショナリズムの国際基準に関する基本施策の枠組みとしてその文書を承認し、作業を進めながら、世界貿易機関やその他の国際機関/組織の継続的な協力を促す。
この施策文書は、UIA及びその加盟各国支部によって採択されたときには、職能基準になりうるより詳細な推奨ガイドラインの草案づくりに際し、UIA加盟支部の建築家登録/免許/証明機関及び認定機関とともに行われるPPC委員会の作業のための指針として役立つであろう。この作業は継続するが、各UIA加盟団体の主権が尊重され、推奨基準は、同等性の原則に対する柔軟な対応を容認し、UIAの各国支部の地域特有の条件を反映する要件の付加を可能にする、ということが必要である。
協定は、「プロフェッショナリズムの原則」という文章から始まり、一連の施策事項へと続く。各施策事項は、施策主題の定義から始まり、背景、施策の文章に続く。
これらの協定及びガイドラインは建築プロフェッションにとって最善の実務及び建築プロフェッションが目指す基準を明らかにすることを目的としている。UIAメンバー各国の主権を尊重する一方で、各支部はこの協定とガイドラインの採択を促進し、かつ、必要に応じて既存の慣習や法律をこれにあわせて修正するよう努めることが勧められる。
会計士分野における相互認証の協定又は取り決めに向け合意された指針からみれば、この協定は、政府、交渉主体や建築サービスの相互認証交渉に参加するその他の主体に対して実務上の指針を与える、ということが提案されている。
この協定及びガイドラインは、関係者による認証協定についての交渉をより容易にするであろう。相互認証を達成するための最も普遍的な方法は、GATS第7条において差し支えないものと認識されている、二国間協定によるものである。教育や試験の基準、実務経験要件、法規制の影響等には違いがある。それら全てを、多国間で相互認証することは極めて困難である。二国間交渉は、二つの特定の環境に関係する主要事項に焦点をしぼることを容易にする。しかしながら、いったん二国間交渉が成立すれば、二国間相互協定が他国にも影響し、ついには相互認証がより広く拡大するであろう。
 
建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際推奨基準に関するUIA協定

プロフェッショナリズムの原則

 建築プロフェッションのメンバーは、プロフェッショナリズム、誠実さ(integrity)、能力(competence)に関する諸基準を守り、そのことにより、建築環境(built environment)の持続可能な発展と文化と公共の利益に不可欠な、独自の技能と知的能力を社会にもたらすのである。プロフェッショナリズムの原則は、法律、倫理綱領をはじめ、専門家としての行動規範のもとで作られる。

専門性(Expertise):建築家は各自、教育、大学及び卒業後の訓練、経験を通して培われた知識、技能、理論の体系を保持している。建築に関する教育、訓練、試験のプロセスは、建築家がプロフェッショナルサービスに従事するにあたり、当該業務を適切に遂行するために一定以上の基準に達していることを一般の人々に対し保証するべく構成されている。さらに、大部分の建築家職能団体のメンバーおよびUIAのめざすものは、建築の芸術および科学に関する知識を維持し、発展させると共に、その成果を尊重し、その成果をより発展させるために寄与することである。

自律性(Autonomy):建築家は、専門知識に裏付けられた客観的で専門的な助言をクライアントそして/または、ユーザーに提供する。建築家は、豊富な学識と、妥協を許さない専門的判断が、建築の芸術および科学を遂行する上で、他のいかなる動機より優先されるべきであるという理想を持ち続けなければならない。また、建築家は、建築関連法規を遵守すると共に、専門的活動が社会および環境にもたらす影響を熟慮しなければならない。

委任(Commitment):建築家は、高度な無私の姿勢で、クライアントや社会の代理として仕事を行なう。この職業に従事するものは、適切かつプロフェッショナルとしてふさわしい態度でクライアントにサービスを提供し、その代理として偏見やかたよりのない判断を行なう責任がある。

責任(Accountability):建築家は、クライアントに対して行う、なにものからも影響されない、時に厳しい助言に対する責任と、自らの仕事が社会や環境に及ぼす影響に対する責任について、自覚する。建築家は、教育、訓練及び/あるいは当該の関係分野での技術的な経験によってその能力が保証されているコンサルタントとともに、プロフェッショナルサービスを遂行する。

 UIAは、各国支部とPPC委員会のプログラムを通じ、公共の健康、安全、福祉に資するために、プロフェッショナリズムの原則とプロフェッショナルな基準の確立をめざし、プロフェッショナリズムと能力の基準を相互に認証することが、建築家業務への国民の信頼を維持し、また公共の利益をもたらすとする立場を支持する。
UIAの原則と基準は、徹底した教育と実務訓練の提供を目的とし、それによって建築家が基本的職能要件を満たすことができるようにするものである。これらの基準は、国によって教育の伝統が異なっていることを認め、教育の同等性を保てるよう留意している。

 
施策事項

建築の業務(Practice of Architecture)

定義:
建築の業務とは、都市計画、単体の建物または建物群の設計、工事、増築、保存、修復、改造に関連し、プロフェッショナルなサービスを提供することである。これらのプロフェッショナルなサービスは、企画、基本構想、土地利用計画、アーバンデザイン、基本調査、設計、模型、製図、仕様書・技術文書の作成、建築家以外の適切な他者(コンサルティングエンジニア、都市計画家、ランドスケープアーキテクト、およびその他の専門コンサルタント。ただしこれらコンサルタントに限るものではない)が作成した技術文書の整合的調整、工事に係る経済的事項、工事請負契約の管理、工事の監視(国によっては「監理(supervision)」ともいう)、プロジェクトマネージメントを含み、また、これらに限定されるものではない。

背景:
建築家は古代から建築に係る芸術や科学を実践してきた。今日我々の知る建築家というプロフェッションは、大きな発展と変遷を遂げた。建築家の業務に対する要求がますます厳しくなってきている。クライアントの要求と技術の進歩がより複雑になるとともに、社会や環境上の規制がますます強まっている。このような変化はサービスの内容の変化や、設計や建設などに携わる多くの当事者間の協働関係に変化をもたらした。

施策:
上記をもって建築の業務の定義とし、UIA国際基準の策定に際し採用する。

建築家(Architect)

定義:
「建築家」の称号は、一般に、法律や慣習によって、プロフェッショナルにかつ、学問的に教育され、それぞれの法的管轄圏(*)で建築業務を行なうための、登録/免許/証明を取得し、公正かつ持続可能な開発、国民の福祉、また、空間、形態、歴史的文脈の見地からの社会の居住スタイルの文化的表現を擁護することに責任を負う者に、付与される。

*訳注:建築家の資格、業務を管理する法律の及ぶ範囲。国、ステート、プロビンス、シュタット等。

背景:
建築家は、社会のニーズに適合するよう、委託、保全、設計、建設、室内造作、資金調達、規制、建築環境の管理を行なう者によって構成され、広義の不動産開発、建築、建設経済部門に含まれる公共及び民間部門の一角を占めている。建築家は様々な状況下や、組織形態の中で業務を行っている。たとえば、独立して活動することもあれば、民間企業あるいは公共団体で業務に従事することもある。

施策:
UIAは上記をもって「建築家」の定義と認め、UIA国際基準の策定に当り採用する。

建築家の基本要件(Fundamental Requirements of an Architect)

定義:
上記で定義した建築家として登録/免許/証明を取得する基本的要件は、次項にリストアップされた知識、技能や能力であり、それらは、プロフェッショナルな能力があると認められるために、承認されたカリキュラムに基づく教育・訓練、証明可能な知識、技能、経験によって取得されなければならない。

背景:
1985年8月、ある国々が、建築家としての基本的な知識と能力を定義するために、はじめて集まった。(*)それは次のようなものである。:

美的要件と環境的に持続可能であることを目指す技術的要件を、共に満たす建築設計を行う能力
建築及び関連する芸術、技術、人文科学の歴史及び理論に関する十分な知識
建築設計の質に影響を与える一要因としての美術に関する知識
アーバンデザイン、計画に関する十分な知識と計画プロセスに関する必要な技能
人と建物との関係、建物とそれを取り巻く環境との関係についての理解。建物や建物と建物の間の空間を人間のニーズと尺度に関連付ける必要性の理解
環境的にサステイナブルなデザインを実現する手段についての充分な知識
建築プロフェッション及び建築家の社会的役割に関する理解。特に、社会的要因を考慮して設計条件をまとめる際の役割に関する理解
調査や設計プロジェクトのための与条件作成の方法に関する理解
建物の設計に伴う構造設計、工事、建設の技術的諸問題に関する理解
建物内部の快適な住環境を確保し、気候条件の影響から保護する物理的な問題、技術、建物の機能に関する十分な理解
コスト要因および建築規制の許容範囲内において、建物のユーザーのニーズに対応した設計をするために必要な技量
設計コンセプトを建物の形に具体化させ、様々なプランを全体的な建築計画に統合するために必要な、産業、組織、規制、手続きに関する十分な知識
プロジェクト財政、プロジェクト管理とコストコントロールに関する十分な知識

(* 参照  欧州共同体委員会指令85/384/EEC)

施策:
UIAは、上述の基本的要件の条項をUIA国際基準の策定のための最低限の基礎として採用し、建築教育カリキュラムの中でこうした特定要件を適切に重視することを保証するよう努める。またUIAは、基本的要件を常に見直し、建築家という職業と社会の関連性を維持するよう努力する。

教育(Education)

定義:
建築教育は、すべての卒業生が、技術体系や要件、健康・安全と生態系のバランスに対する配慮を含む建築設計能力を持っていること、建築に関する文化的、知的、歴史的、社会的、経済的、環境的要因を理解していること、洗練された分析的かつ創造的な思考力に依って、社会における建築家の役割と責任を完全に理解していることを保証するべきである。

背景:
多くの国々では、建築教育は、歴史的には別の形(パートタイムの学習プログラム、現場の実務経験など)があったが、通常、大学における4〜6年間のフルタイムの学校教育(国によっては、後に一定期間の実務経験/訓練/インターン制が求められる)により行われている。

施策:
UIA/UNESCO建築教育憲章にしたがい、UIAは、建築家のための教育は(実務経験/訓練/インターン制を除く)原則として、認定/認可/承認をうけた大学におけるフルタイムの、認定/認可/承認された建築課程における、5年以上の期間によって行われることを主張するものであるが、同時に教育学的アプローチおよび地域の特殊事情への対応が多様となりうることと教育の同等性について柔軟な対応をすることを容認する。

認定/認可/承認(Accreditation/Validation/Recognition)

定義:
これは、教育プログラムが一定の達成基準を満たしていることを認定するプロセスである。その目的は、適切な教育基盤の維持と向上を保証することである。

背景:
独立した機関による認定/認可/承認のための基準と手続きは、適切に総合されかつ調整された建築教育のプログラムの発展を助ける。またこのような基準が、内部品質保証監査に加え外部機関による定期的な監督によって、調和され、促進させられることは、経験により明らかである。

施策:
大学教育課程は、外部の独立審査機関により適当な期間(通常5年以内)ごとに認定/認可/承認を受けなければならない。また、UIAは、高等教育に関連するそれぞれの国の組織と協力して、学問的に構成され、知的一貫性があり、実習を基本とし、成果を重視し、そして適切な業務から導き出される手続きをもって、建築家職能教育の内容に関する基準を発展させる。

実務経験/訓練/インターン制 (Practical Experience/Training/Internship)

定義:
実務経験/訓練/インターン制とは、建築教育期間中そして/または、専門学位取得後、登録/免許/証明に先立って行われる、建築業務の中での体系的な活動を指す。

背景:
公益の保護のため、大学における学校教育を補完するため、建築家としての登録/免許/証明の取得を目指す者は、実務訓練を通じ、その正規の教育課程で学んだ知識の統合を図らなければならない。

施策:
建築を専攻した卒業生には、建築家として実務を遂行するための登録/免許/証明取得に先立ち、少なくとも2年間(ただし、今後3年間を目標として働きかけを行っていく)にわたる一定水準の経験/訓練/インターン制を終了することが求められる。また教育の同等性に関しては柔軟な対応も容認される。

専門的知識と能力の証明 (Demonstration of Professional Knowledge & Ability)

定義:
建築家として登録/免許/証明を受けようとするすべての者は、一定水準の専門的知識と能力を関連当局に対して証明することを要求される。

背景:
建築家の知識と能力が社会的に認められるためには、必要な教育と実務経験/訓練/インターン制を終了し、総合的な建築の実務を遂行するための最低限の知識と能力を身に付けたことが証明されなければならない。これらの能力を有することは、試験および/または他の証拠によって証明されなければならない。

施策:
建築家が修得した専門的知識と能力は、適切な証拠を提出して証明しなければならない。この証拠には、実務経験/訓練/インターン制終了時の試験に合格したことを示す証拠が含まれなければならない。試験によって評価されない専門的実務に係る知識と能力に不可欠な構成要素は、その他の適切な証拠によって証明しなければならない。それらの要素とは、経営、ビジネス管理、関連法規、倫理、プロフェッショナリズムなどの分野を含む。

登録/免許/証明 (Registration/Licensing/Certification)

定義:
登録/免許/証明は、無資格の者が特定の機能を遂行することを防止するための法規制と関連して、個人が建築家として業務に従事する資格を公式に法的に認めることを指す。

背景:
品質、持続可能な建築環境、その環境の開発に関係する危険性やそれによりもたらされる影響に関する公共の利益を考慮すると、公益の保護のため建築サービスが適切な資格を有する専門家によって遂行されることが重要である。

施策:
UIAは、すべての国において建築家としての機能の登録/免許/証明を促進しなければならない。また、こうした登録/免許/証明の条項は、法令に基づくものでなければならない。

発注(Procurement)

定義:
発注とは、建築サービスを委託するプロセスを指す。

背景:
建築家は(倫理と行動を通して)、自らの利益より、クライアントと社会全体の利益を優先させる。建築家は、公益という観点から求められる基準を満たしながら、職務を遂行するのに十分な財源を保証するため、伝統的に規定され、または推奨された報酬基準に基づき、報酬を得ている。

 建築家の、公正な選定を保証する目的で、WTOによる発注に関する一般協定やEUサービス指令など国際的なルールがあるが、しかしながら近年、公共及び民間工事両方において、コストのみに基づき建築家を選択する傾向が強まっている。コストに基づく選択では、建築家はクライアントに十分なサービスを提供できなくなり、ひいては設計の質、したがって建築環境の質、快適さ、社会的・経済的価値の低下を招く。

施策:
建築環境の継続可能な開発を確かなものとし、社会の、社会的、文化的、経済的価値を保護するために、政府は、プロジェクトに最適な建築家の選定をめざし、建築家に依頼するための発注手続要領を準備すべきである。当事者間で同意されている十分な条件次第で、以下の方法の一つを行うのが最良である。:

UNESCO−UIA国際コンペティションガイドラインの原則に則り、国家当局および/もしくは建築職能団体に認められた建築デザインコンペティション。
UIAガイドラインに詳述された、能力に基づく選定(QBS)手続き。
建築サービスの領域と質を明確にしたブリーフに基づく直接交渉。

倫理及び行動(Ethics & Conduct)

定義:
倫理及び行動規範は、建築家が業務を遂行する際に、専門家としての行動の拠り所となるものである。建築家は業務を行う法的管轄圏において適用されている倫理及び行動規範を遵守しなければならない。

背景:
倫理行動規範の主要な目的は、建築関連業務に従事する者の利益の増進に加え、弱者と社会福祉全般を配慮し、公共を保護することである。

施策:
現行のUIAコンサルティング・サービスに関する国際倫理綱領は効力を有する。
UIA加盟支部は、自国の倫理行動規範に推奨協定のガイドラインを導入し、国際法や当該建築家の自国の法規により禁止されていない場合に限り、メンバーが当該業務を提供する相手国や法的管轄圏のもとで適用される倫理綱領を遵守するよう促されている。

職能の継続開発(Continuing Professional Development)

定義:
職能の継続開発とは、建築家としての知識を維持、強化、あるいは増進させ、能力を継続させる、一生にわたる学習プロセスである。

背景:
最近、職能団体および管轄官庁が、そのメンバーに対し、既存の技量を維持し、より豊かな知識を修得し、新分野を開拓することに時間をさくことを(通常、少なくとも年間35時間)求める傾向が強まっている。これは、新しい技術や仕事の方法、及び、変化する新しい社会・環境条件に遅れずにいることが、ますます重要となっているからである。職能の継続開発は職能団体によって会員資格の更新や継続の要件として求められることになるだろう。

施策:
UIAは加盟支部に対し、公共の利益のために、会員の義務として職能の継続開発の制度を構築するよう主張する。建築家は提供するサービスを完全に遂行する能力を持つことを保証しなくてはならない。また倫理行動規範は建築家に対して、将来的に様々な変更がなされたりしたとしても、「建築家の基本要件」で述べられている様々の分野での水準を維持するよう義務づけなくてはならない。一方、UIAは、登録更新の際の職能の継続開発の制定状況、すべての国家間で相互に通用を可能にする推奨ガイドラインを監督し、さらにはこの問題に係る施策を継続的に開発しなければならない。

業務の範囲(Scope of Practice)

定義:
これは、土地利用計画、アーバンデザイン、建築プロジェクトに関わる、設計とマネージメントのサービスの提供である。

背景:
社会の発展にともない、都市的及び建築環境の創造は複雑さを増している。建築家は、増加する広範にわたる様々な、都市的・美的・技術的・法的な要素に対処しなければならない。法規・技術・実用性といった要件がかなうことと、社会からの要求と需要が満たされることを保証するためには、建物の設計に対して、調和のとれたアプローチが必要であることは、すでに明らかである。

施策:
UIAは、倫理行動規範の規定に抵触しない限り、建築業務の領域が今後とも拡張されるよう奨励・促進し、それに合わせて、領域の広がりに対処するために必要な知識や技量も確実に伸ばしていくよう努力する。

業務の形態(Form of Practice)

定義:
建築家が建築サービス業務を提供する際の法的実体を指す。

背景:
伝統的に建築家は、個人として、パートナーシップのもとに、あるいは公共・民間機関で雇用されて業務を行なってきた。最近では、業務上の必要性から、全ての国々で認められているわけではないが、例えば有限および無限責任会社、協同組合組織、大学を拠点とするプロジェクト事務所、コミュニティ建築プロジェクトなど、様々な業務形態が生じている。この中には他の分野の専門家を含むような形態を取る場合もある。

施策:
建築家はサービスを提供する国の法律で許容される範囲内において、いかなる業務形態もとることができるようになるべきである。しかし、この場合でも、現行の倫理行動規範の要件に常に従わなければならない。社会の利益に資する建築プロフェッションの果たす積極的・創造的役割を代替策によって拡張できると考えられる場合には、UIAは必要に応じ、代替的な業務形態や異なる地域的条件を考慮して、施策や基準を考案・修正する。

受入国での実務(Practice in a Host Nation)

定義:
受入国での実務とは、自国以外の国で個々の建築家や建築家の法人組織が業務を求めたり、プロジェクトを設計するために任命されていたり、業務を提供したりすることである。

背景:
建築家の国家間移動の増加と、その建築家が属する法的管轄圏外での業務提供能力に関心が高まってきている。また、地域環境、社会的、文化的要素、倫理および法的基準の周知を促進する必要がある。

施策:
建築家が、自身が登録されていない国で、あるプロジェクトに関して業務を提供する場合、法的、環境面、社会的、文化的な要素、及び伝統的な要素のことを適切にかつ有効に理解していることを保証するために、地元建築家と共同する。その共同体の条件は、UIA倫理基準と、地元の法律に従って当事者だけで決定されるべきである。

知的所有権/著作権(Intellectual Property/Copyright)

定義:
知的所有権には、特許権、著作権、商標の三つの法的権利が含まれる。知的所有権とは(ときに幾つかの国では法律で保証されているが)、デザイナー、発明者、著作者及び生産者が、自らのアイデア、デザイン、発明品、著作物、製品・サービスの供給元と特定される権利を指す。

背景:
多くの国では、建築家による設計を対象とする特定の法的保護措置があるが、その保護は不十分である場合が多い。建築家が、クライアントとアイデアやコンセプトについて協議したが結局指名されず、しかし後日、クライアントがその建築家のアイデアを適切な対価を支払わず無償で利用していることに気づく、というような話は珍しくもない。建築家の知的所有権は、国際規則によりある程度は保護されている。例えば、GATSの文脈においては、これは、偽造商品の貿易(TRIPS)を含む知的所有権の貿易に関連する側面の協定である。1955年9月16日の世界著作権協定もまた国際的に重要である。また、欧州では、1886年ベルン協定の改訂版がほとんどの国で締結されている。

施策:
UIA加盟支部の国内法は、建築家が自分の権限と責任を侵害されることなく専門的実務を遂行するとともに、自己の作品の知的所有権や著作権の保有権を維持できるよう、建築家に権利を与えるべきである。

職能団体の役割(Role of Professional Institutes)

定義:
一般に、専門的職業は、基準(例えば、遵守するべき教育基準や倫理規則、職能基準)を設定する管理主体によってコントロールされる。規則と基準は公益に資するように作られ、メンバーの私益に貢献するものではない。国によっては特定種類の業務の遂行が法令で特定のプロフェッションだけに限定されているが、それは会員のためではなく、一般の人々を保護するために、必要な教育、訓練、基準、規律を満たす者だけが実行すべき性質のものだからである。職能団体は、建築分野の発展や知識の促進のために、また会員がすでに制定された基準を遵守するよう保証することによって公益を保護するために設立されている。

背景:
国家が、名称もしくは機能(あるいは双方、あるいはどちらもなく)を保護するか否かにより、職能団体の役割と責任は大きく異なる。一部の国では、法定機関が職能を代表し、そうでない場合は、これらの機能は分離されている。
通常、職能団体の会員はすでに制定された基準を守ることを求められる。これはその職能団体が公表する行動規範を守るとともに、職能の継続開発等のその他の会員資格要件を満たすことによって達成される。

施策:
職能団体が存在しない国々では、UIAが建築プロフェッションに従事する者に対し、そのような機関を設立して公益に資するよう奨励するべきである。

 職能団体は、加盟会員が、UIAの国際基準、UIA−UNESCO建築教育憲章の最低要件、およびUIAの国際倫理綱領を遵守し、「基本的要件」リスト(現行のものと、将来に変更された場合の両方)により要求される自己の知識や技能を常に時代の状況に合うように維持し、建築文化及び知識の発展、そして彼らがサービスを提供する社会の発展に貢献するということに努めるべきである。

 
付属A

「建築実務におけるプロフェッショナリズムの推奨基準に関するUIA協定案」についての決議

バルセロナ,スペイン,1996年7月

UIA総会は、次のとおり決定する。

 UIA及びUIA職能実務委員会の進行中の業務を導くための推奨施策として「建築実務におけるプロフェッショナリズムの国際最低基準に関するUIA協定案」を採択すること。

 その協定が、北京で行われる第21回総会への提示に向け、施策的枠組みのさらなる整備を行うための協力と参加の要請とともに、その協定が全てのUIA加盟支部に配布されるであろうこと。

 この協定を、建築家のプロフェッショナリズムの基準に関する基本施策の枠組みとして世界貿易機関(WTO-OMC)に伝達しUIAによりさらに整備されるよう、UIA会長に要請するとともに、UIA会長は、UIAのこの作業を進めるため世界貿易機関の継続的な協力を促す。

 

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